ARTILLERYとは?バンドの基本情報と特徴
ARTILLERY(アーティレリー)は、1982年にデンマークの首都コペンハーゲン郊外のホイイ・トストロプで結成されたスラッシュ・メタル・バンドです。
バンド名はトルコ出身の劇作家・革命運動家のナジーム・ヒクメットの詩「Heavy Artillery」から取られたと言われています。
バンドは1985年にデモ音源『Fear of Tomorrow』をリリース。これが注目を集め、同年にアルバムとして正式リリースされることで、欧州のスラッシュ・シーンに強いインパクトを与えました。1987年には2ndアルバム『Terror Squad』を発表し、より攻撃的かつテクニカルなスタイルを打ち出します。
1990年には、バンドの代表作とされる3rdアルバム『By Inheritance』をリリースします。このアルバムは複雑なリフとメロディアスな構成が高く評価され、ARTILLERYの名をスラッシュメタル界に確固たるものとしました。しかしその後、商業的な成功には至らず、1991年に一度解散します。
1998年にコンピュレーションアルバムを発売し、翌年4thアルバム『B.A.C.K.』を発売するも2000年で再び活動停止。7年の時を経て2007年バンドは再結成され、アルバム『When Death Comes』(2009年)で復活を果たします。以降、メンバーチェンジを繰り返しながらも活動を継続し、『Legions』(2013年)、『Penalty by Perception』(2016年)、『The Face of Fear』(2018年)など意欲的なリリースを続けています。
2021年には『X(テン)』をリリースし、キャリア10作目の節目を迎えました。このアルバムでは、原点回帰とも言えるストレートなスラッシュサウンドと、長年の経験に裏打ちされた完成度の高い楽曲が揃い、往年のファンと新世代のリスナーの双方から支持を集めました。
なお、創設メンバーだったモルテン・ステュッツァー(Morten Stutzer)<Gt>が2019年に、2023年にはヨシュア・マドセン(Josua Madsen)<Dr>が他界、活動休止状態となりますが、新たなメンバーが加入しバンドはその意志を引き継ぎ、現在も活動を続けています。2025年現在、ARTILLERYは北欧スラッシュメタルのベテランとして世界各地でのライブや新作リリースを視野に、精力的な活動を行っています。
アルバム紹介|再評価されるべき北欧スラッシュの名手
X(2021)
- The Devil’s Symphony
- In Thrash We Trust
- Turn Up The Page
- Silver Cross
- In Your Mind
- The Ghost Of Me
- The Force Of Indifference
- Varg i veum
- Mors Ontologica(The Death Of The Spirit)
- Eternal Night
- Beggars In Black Suits
疾走と緻密が共鳴する、10作目にして最も攻撃的なARTILLERYがここに。
2021年発売の記念すべき10thアルバムは、40年以上のキャリアを誇る彼らの進化と情熱を体現する作品です。往年のスラッシュらしい鋭いリフと疾走感は健在ながら、現代的な音作りとメロディアスな展開で新たな魅力を提示。創設メンバーのモルテン・ステュッツァーの死を乗り越え、なお前進を続ける姿勢は、まさにスラッシュ・メタルの生存力の証明です。懐かしさと新鮮さを兼ね備えた『X』は、世代を超えて支持される力強い一枚。スラッシュ再評価の今、必聴のアルバムです。
The Face Of Fear(2018)
- The Face Of Fear
- Crossroads To Conspiracy
- New Rage
- Sworn Utopia
- Through The Ages Of Atrocity
- Thirst For The Worst
- Pain
- Under Water
- Preaching To The Converted
- Mind Of No Return
- Doctor Evil
古き良きスラッシュ魂と現代的テーマが融合した問題作
2018年に放った9thアルバムは、鋭利なギターリフと重厚なサウンドが炸裂する社会派アルバムです。核戦争や監視社会といった現代的テーマをメタルの怒りに乗せて描き、聴く者に強烈なメッセージを投げかけます。80年代スラッシュの精神を継承しつつ、洗練されたプロダクションで新たな進化を遂げた本作は、往年のファンから初聴者まで幅広く響く内容です。ARTILLERYの真骨頂である知性と攻撃性が見事に融合した一枚。今こそ、その「恐怖の顔」に直面する時です。
Penalty By Perception(2016)
- In Defiance Of Conformity
- Live By The Scythe
- Penalty By Perception
- Mercy Of Ignorance
- Rites Of War
- Sin Of Innocence
- When The Magic Is Gone
- Cosmic Brain
- Deity Machine
- Path Of The Atheist
- Welcome To The Mindfactory
鋭く、緻密に – ARTILLERYが魅せる知性派スラッシュの極致
2016年発売の8thアルバムは、知性と攻撃性が見事に融合した完成度の高い一作です。クラシックなスラッシュの荒々しさに、緻密な構成力とメロディセンスを加え、単なるノスタルジーに終わらないモダンな響きを実現。政治や社会を鋭く切り取る歌詞も聴き応えがあり、バンドの成熟ぶりが随所に感じられます。スピードと説得力を併せ持つ楽曲は、スラッシュメタルの可能性を広げる力作です。
Legions(2013)
- Chill My Bones(Burn My Flesh)
- God Feather
- Legions
- Wardrum Heartbeat
- Global Flatline
- Dies Irae
- Anno Requiem
- Enslaved To The Nether
- Doctor Evil
- Ethos Of Wrath
スラッシュの軍勢、再び集結!ARTILLERYが放つ新章の衝撃!
新ボーカリストのミカエル・バストホルム・ダール加入後初の2013年に発表した7thアルバムで、バンドの“新章”を告げる作品です。荒々しいリフとタイトなリズムは健在ながら、より洗練されたメロディと構成力が加わり、熟練の技巧が光る仕上がりとなっています。特に楽曲の完成度は高く、重厚でありながらもキャッチーさを備えており、リピーター続出の一枚。古き良きスラッシュの精神を継承しつつ、モダンな感覚で再構築された『Legions』は、まさに“進化する老兵”ARTILLERYの現在地を示す快作です。
My Blood(2011)
- Mi Sangre(The Blood Song)
- Monster
- Dark Days
- Death Is An Illusion
- Ain’t Giving In
- Prelude To Madness
- Thrasher
- Warrior Blood
- Concealed In The Dark
- End Of Eternity
- The Great
“血”が語る、スラッシュの未来と過去 – ARTILLERYの熱量が爆発する!
2011年にリリースされた6thアルバムは、北欧スラッシュの伝統を受け継ぎながら、深みと情熱を兼ね備えた力作です。荒々しくも整ったギターリフ、タイトなリズム、そしてソリッドなボーカルが一体となり、まさに“魂のスラッシュ”を体現。歌詞には個人的かつ社会的なテーマが込められ、バンドの成熟を感じさせる内容に仕上がっています。攻撃性と叙情性のバランスが見事で、古参ファンはもちろん、スラッシュメタル初心者にもおすすめの一枚です。ARTILLERYの血脈はここに生きている――それを強く感じさせてくれるアルバムです。
When Death Comes(2009)
- When Death Comes
- Upon My Cross I Crawl
- 10,000 Devils
- Rise Above It All
- Sandbox Philosophy
- Delusions Of Grandeur
- Not A Nightmare
- Damned Religion
- Uniform
- The End
復活の第一声は、鋼鉄と共に――ARTILLERYが刻む生と死のメタル叙事詩。
3代目ヴォーカリスト、フレミング・ロンスドルフ以外のメンバーが再集結し、2009年約10年ぶりに世に放った5thアルバムは、スラッシュ・メタルの魂が再び燃え上がったことを証明する一枚です。新たなボーカル、ソレン・アダムセンの力強い歌声と、変わらぬ鋼鉄のリフが見事に融合し、バンドの新章を高らかに告げます。古典的スラッシュの攻撃性と、成熟した楽曲構成のバランスは絶妙で、復活作としてだけでなく、単独作品としての完成度も非常に高い仕上がりです。ARTILLERYが死から蘇り、新たな生命を吹き込んだ今作は、すべてのスラッシュ・ファン必聴の名盤です。
B.A.C.K.(1999)
- Cybermind
- How Do You Feel
- Out Of The Thrash
- Final Show
- WWW
- Violent Breed
- Theatrical Exposure
- B.A.C.K.
- The Cure Paparazzi
沈黙を破る音の逆襲!ARTILLERYが刻むスラッシュ・リバイバルの幕開け。
1991年の解散から約8年、突如としてシーンに復帰した4thアルバム。90年代後半の音楽トレンドを意識しつつも、彼ららしいテクニカルで硬質なスラッシュサウンドは健在。重厚なギターリフと鋭利なソロ、そして力強いボーカルが融合し、90年代後期におけるスラッシュの可能性を広げた一枚となっています。再結成作でありながら、単なるノスタルジーに終わらず、ARTILLERYの新たな息吹を感じさせる本作は、鋼鉄の意志と変わらぬ攻撃性を証明する復活作です。
By Inheritance(1990)
- 7:00 From Tashkent
- Khomaniac
- Beneath The Clay(R.I.P.)
- By Inheritance
- Bombfood
- Don’t Believe Life In Bondage
- Equal At First
- Razamanaz(NAZARETH cover)
- Back In The Trash
美しさと凶暴さの完璧な均衡 – ARTILLERYが放った歴史的名作。
1990年にリリースされた3rdアルバムは、北欧スラッシュ・メタル史における不朽の名作として知られています。テクニカルで切れ味鋭いリフワーク、緻密な曲構成、そしてメロディアスな展開が絶妙に融合し、攻撃性だけでなく芸術性をも感じさせる一枚です。特にタイトな演奏とユニークな中東風フレーズの導入は、当時としては革新的でした。現在も多くのファンやミュージシャンに影響を与え続けるこの作品は、スラッシュ・メタルを超えた完成度を誇ります。聴けば納得の傑作――それが『By Inheritance』です。
Terror Squad(1987)
- The Challenge
- In The Trash
- Terror Squad
- Let There Be Sin
- Hunger And Greed
- Therapy
- At War With Science
- Decapitation Of Deviants
激走する凶暴音 – ARTILLERYが叩きつけた初期スラッシュの攻撃宣言
1987年発表の2ndアルバムは、北欧スラッシュ・メタルの可能性を一気に押し広げた歴史的作品です。荒々しくも制御されたリフ、緻密な構成、そして激烈なスピード感が一体となり、当時のシーンに衝撃を与えました。タイトル曲を筆頭に、全編を通して攻撃性と技巧が高次元で融合しており、初期スラッシュの混沌に理知的な構築美を持ち込んだ点が特筆すべき魅力です。現在でもその勢いは色褪せることなく、多くのファンにとって“鋼鉄のクラシック”として語り継がれています。
Fear Of Tomorrow(1985)
- Time Has Come
- The Almighty
- Show Your Hate
- King, Thy Name Is Slayer
- Out Of The Sky
- Into The Universe
- The Eternal War
- Fear Of Tomorrow
- Deeds Of Darkness
明日への恐怖が鋭利な音となる – 北欧スラッシュの出発点
1985年にリリースされたデビュー作は、北欧スラッシュ・メタルの幕開けを告げる重要作品です。粗削りながらも鋭く攻撃的なギターリフ、アグレッシブなボーカル、そして反骨精神あふれる歌詞が交錯し、バンドの原点を色濃く刻んでいます。アンダーグラウンドで熱狂的に支持された本作は、のちのスラッシュ勢にも影響を与える存在となりました。荒々しさと勢いに満ちたサウンドは、今なお新鮮に響き、ARTILLERYの不変の魅力を証明しています。北欧スラッシュの歴史を知るうえで、欠かせない一枚です。
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