PANTERAとはどんなバンドか? | 歴史と歩み
PANTERA(パンテラ)は、アメリカ・テキサス州で結成されたヘヴィメタル/グルーヴメタル・バンドです。1981年にダイムバッグ・ダレル(Dimebag Darrell)<Gt>とヴィニー・ポール(Vinnie Paul)<Dr>のアボット兄弟を中心に結成され、後に1982年にレックス・ブラウン(Rex Brown)<Ba>が、1987年にフィリップ・アンセルモ(Philip Anselmo)<Vo>が加わることで、黄金期のラインナップが確立されました。
結成当初はPANTERA’S METAL MAGICと名乗っていましたが、1982年にPANTERAに改名。初期はグラムメタル色の強いスタイルで活動していましたが、1986年に音楽性の違いからヴォーカルが脱退。1987年にフィリップ・アンセルモが加入し新体制で4thアルバム『Power Metal』を発売。このアルバムを機に彼らは今までのイメージから後に”グルーヴメタル”と呼ばれる独自のスタイルを追究。1990年の5thアルバム『Cowboys from Hell』を機にサウンドを一新。重厚かつ切れ味鋭いギターリフと凶暴なボーカルが特徴の「グルーヴメタル」スタイルを確立し、世界中のメタルファンから熱狂的な支持を集めました。
なお、デビューアルバムから4thアルバムまではバンドのオフィシャルサイトにも掲載されず、一般的には『Cowboys from Hell』がPANTERAのデビューアルバムとして認識されています。
1992年の『Vulgar Display of Power』、1994年の『Far Beyond Driven』(全米1位獲得)などの名盤を通じて、PANTERAは1990年代メタルシーンの中心的存在となります。METALLICAに次ぐ影響力を誇るバンドとして、多くのフォロワーや後続のバンドに多大な影響を与えました。
2003年、サイドプロジェクトに重きを置いて活動していたフィリップ・アンセルモとPANTERAの継続を望んでいたアボット兄弟の溝が深まり、正式に解散。その年、ダイムバッグ・ダレルとヴィニー・ポールは、HALFORDのギタリストだったパトリック・ラックマン(Patrick Lachman)<Vo>らとDAMAGEPLANを結成。勢力的に活動していたが、2004年にはダイムバッグ・ダレルがライヴ中に観客に射殺されるというショッキングな銃撃事件で悲劇的な死を遂げ、世界中のファンに衝撃を与えました。
その後、ヴィニー・ポールはMUDVAYNEのメンバーらとHELLYEAHを結成し、2018年に急病で亡くなるまで活動しました。
2022年にはフィル・アンセルモとレックス・ブラウンを中心に再結成プロジェクトが始動。元OZZY OSBOURNE、BLACK LABEL SOCIETYのザック・ワイルド(Zakk Wylde)<Gt>とチャーリー・ベナンテ(Charlie Benante)<Dr>がサポートメンバーとして参加し、新たな世代へ向けたPANTERAの精神継承がスタートし、現在も定期的にツアーを続けています。
PANTERAは「怒り」「重圧」「誠実さ」を音に昇華したバンドとして、今なお多くのメタルファンに支持され続けています。その音楽は時代を超えて生き続ける、“真のメタルレジェンド”です。
アルバム紹介 | PANTERAがメタルシーンに与えた影響
Reinventing The Steel(2000)
- Hellbound
- Goddeman Electric
- Yesterday Don’t Mean Shit
- You’ve Got To Belong To It
- Revolution Is My Name
- Death Rattle
- We’ll Grind That Axe For A Long Time
- Uplift
- It Makes Them Disappear
- I’ll Cast A Shadow
怒りと誇りの最終章―PANTERAの魂が焼き付けられた一枚!
PANTERAのラスト・アルバムは、彼らのキャリアを締めくくるにふさわしい重厚かつ直球な一枚です。原点回帰を意識した本作では、グルーヴメタルの本質に立ち返りつつも、現代的な音圧とアグレッションが加えられています。フィル・アンセルモの荒々しいシャウトと、ダイムバッグ・ダレルの鋭利なギターリフが炸裂し、全編を通して鋼鉄の意志が貫かれています。「Hellbound」や「Revolution Is My Name」などは、PANTERAらしさ全開の名曲として語り継がれる存在です。時代の流れに迎合せず、自らの道を貫いたPANTERAの精神が詰まった本作は、まさに“再構築された鋼”と呼ぶにふさわしい傑作です。
The Great Southern Trendkill(1996)
- The Great Southern Trendkill
- War Narve
- Drag The Waters
- 10’s
- 13 Steps To Nowhere
- Suicide Note Pt.Ⅰ
- Suicide Note Pt.Ⅱ
- Living Through Me(Hell’s Wrath)
- Floods
- The Underground In America
- (eprise)Sandblasted Skin
音で切り裂く偽善と虚飾―PANTERAが挑んだ最も過激なアルバム!
8thアルバムは、バンド史上最も過激で攻撃的なアルバムとして知られています。冒頭のタイトル曲から炸裂するフィル・アンセルモの凶暴なシャウトは、リスナーに衝撃を与えると同時に、本作の怒りと絶望の方向性を明確に提示します。ダイムバッグ・ダレルのギターは鋭利でありながらも情感を帯び、サウンドに深みを加えています。薬物依存や偽善への怒りといったテーマが赤裸々に描かれ、自己破壊と内省が交錯する歌詞が胸に突き刺さります。PANTERAの限界を超えた挑戦が詰まった本作は、聴く者の精神を揺さぶる強烈な問題作であり、彼らの真の核心に迫る傑作です。
Far Beyond Driven(1994)
- Strength Beyond Strength
- Becoming
- 5 Minutes Alone
- I’m Broken
- Good Friends And A Bottle Of Pills
- Hard Lines, Sunken Cheeks
- Slaughtered
- 25 Years
- Shedding Skin
- Use My Third Arm
- Throes Of Rejection
- Planet Caravan(BLACK SABBATH cover)
暴力的グルーヴの到達点―PANTERAが全米1位を叩きつけた衝撃作!
7thアルバムは、グルーヴ・メタルというジャンルを極限まで押し広げた圧倒的作品です。全米ビルボード初登場1位という快挙を成し遂げながら、その中身は商業性とは無縁の攻撃性に満ちています。「Becoming」「5 Minutes Alone」「I’m Broken」など、重低音と爆発的な怒りが交錯する名曲群は、彼らの頂点を象徴する存在です。ヴォーカル、ギター、リズム隊の圧倒的重圧が融合し、聴く者を一瞬で飲み込みます。“売れ線”とは真逆を行きながら1位を獲得したこのアルバムは、PANTERAが本物の“ヘヴィネス”を提示した歴史的傑作です。
Vulgar Display Of Power(1992)
- Mouth For War
- A New Level
- Walk
- Fucking Hostile
- This Love
- Rise
- No Good(Attack The Radical)
- Live In A Hole
- Regular People(Conceit)
- By Demons Be Driven
- Hollow
暴力と美学の共存―“Walk”と共に刻まれたPANTERAの精神!
6thアルバムは、グルーヴ・メタルというジャンルを決定づけた金字塔です。象徴的な楽曲「Walk」に代表されるように、シンプルながらも破壊的なリフと、暴力的でありながら計算された美学が感じられる作品に仕上がっています。「Mouth for War」や「This Love」など、攻撃性と叙情性の両面を併せ持つ楽曲が揃い、PANTERAの表現力の広さを示し、バンド全体が完璧な緊張感を保ったまま駆け抜けます。メタル史に燦然と輝くこの作品は、まさに“力の暴力的展示”を音で体現した一枚です。
Cowboys From Hell(1990)
- Cowboys From Hell
- Primal Concrete Sledge
- Psycho Holiday
- Heresy
- Cemetery Gates
- Domination
- Shattered
- Clash With Reality
- Medicine Man
- Message In Blood
- The Sleep
- The Art Of Shredding
90年代メタルの夜明け―PANTERAが切り開いた新時代の幕開け!
バンドの転機となった5thアルバムです。それまでのグラム路線を完全に脱却し、重厚で切れ味鋭いリフを武器とした“グルーヴ・メタル”という新たなスタイルを確立しました。表題曲「Cowboys from Hell」は、その象徴とも言えるスラッシーでタフな一撃。フィル・アンセルモの咆哮、ダイムバッグ・ダレルの鋭利なギター、そしてヴィニー・ポールの力強いドラムが三位一体となり、PANTERAならではの強靭な音像を生み出しています。「Cemetery Gates」では叙情性も覗かせ、表現力の幅も証明。本作は、90年代以降のヘヴィメタルの方向性を変えた革命的アルバムとして、今なお高い評価を受けています。
Power Metal(1988)
- Rock The World
- Powe Metal
- We’ll Meet Again
- Over And Out
- Proud To Be Loud
- Down Below
- Death Trap
- Hard Ride
- Burnnn!
- P•S•T•88
“鋼鉄の力”を試す冒険―フィル・アンセルモ加入で動き出した進化の序章!
1988年にリリースされた4thアルバムは、新ボーカリスト、フィル・アンセルモを迎えて放った重要な過渡期作品です。グラムメタルの華やかさを残しつつも、より重く鋭いリフワークが導入され、のちのグルーヴ・メタル路線の“前兆”が随所に感じられます。楽曲はスピード感とメロディを併せ持ち、「Over and Out」や「Power Metal」といった楽曲には初期ならではの勢いと荒削りな魅力が満載です。フィルのボーカルはまだ高音寄りながら、確かな存在感を示しており、のちの獰猛なスタイルへの変貌を予感させます。本作はPANTERAが本格的な進化を遂げる前の“隠れた一枚”として、ファンなら一度は聴いておくべき作品です。
I Am The Night(1985)
- Hot And Heavy
- I Am The Night
- Onward We Rock!
- D*G*T*T*M
- Daughters Of The Queen
- Down Below
- Come-On Eyes
- Right On The Edge
- Valhalla
- Forever Tonight
スピードとメロディの狭間で燃え上がる、青春メタルの記録!
PANTERAがまだグラム/スピードメタル色を強く打ち出していた時期の3rdアルバムです。豪快なギターソロとハイトーンボーカルが炸裂する本作は、若きダイムバッグ・ダレルの卓越したギターワークが際立つ一枚でもあります。疾走感あふれる「Hot and Heavy」やキャッチーな「Down Below」など、当時の時代性を反映しながらも、後年のPANTERAに通じるタフなリフの片鱗が垣間見えます。まだ荒削りながら、メタルへの情熱と自信に満ちたサウンドは、グルーヴ時代しか知らないリスナーにも新鮮な驚きを与えるはずです。PANTERAの“夜明け前”を知る上で欠かせない、隠れた原点です。
Projects In The Jungle(1984)
- All Over Tonight
- Out For Blood
- Blue Lite Turnin’ Red
- Like Fire
- In Over My Head
- Projects In The Jungle
- Heavy Metal Rules!
- Only A Heartbeat Away
- Killers
- Takin’ My Life
熱く、派手に、そして真剣に―“Jungle”で叫ぶ鋼鉄の第二章!
2ndアルバムは、バンドが本格的なヘヴィメタルへと歩みを進め始めた重要作です。前作のポップ寄りなグラム要素を残しつつも、楽曲構成やギターリフに明確な重さと鋭さが加わり、のちの進化を予感させる内容となっています。若きダイムバッグ・ダレルのギターワークはすでに際立っており、「All Over Tonight」や「Like Fire」では派手で切れ味のあるプレイが光ります。ヴォーカルはテリー・グレイズが担当し、劇的なメロディと華やかなアプローチが全体を彩ります。グルーヴメタル以前のPANTERAを知る上で欠かせないこの作品は、彼らの成長の“はじまり”を記録した貴重なアルバムです。
Metal Magic(1983)
- Ride My Rocket
- I’ll Be Alright
- Tell Me If You Want It
- Latest Lover
- Biggest Part Of Me
- Metal Magic
- Widowmaker
- Nothin’ On(But The Radio)
- Sad Lover
- Rock Out!
グルーヴ前夜の甘く危うい魔力―幻のデビュー作『Metal Magic』!
1983年に自主制作でリリースされた、PANTERAの記念すべきデビュー作です。当時メンバーは10代であり、サウンドはグラムメタルやハードロックの影響を強く受けたものですが、その中にすでに“鋼鉄の片鱗”が感じられます。派手なギターソロ、キャッチーなメロディ、そして若さ特有の勢いが全編にあふれており、のちのヘヴィ路線とは異なる魅力を放ちます。PANTERAの真の出発点として、このアルバムはファンにとって貴重な“魔法の始まり”を記録した一枚です。
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