ANAAL NATHRAKHとは？インダストリアルブラックメタルとグラインドの融合が生んだ異端の存在

ANAAL NATHRAKHとは？結成から現在までの歴史と進化
1. ANAAL NATHRAKHのバンドメンバーの変遷と現在のラインナップ
アルバム紹介：ANAAL NATHRAKHが体現する“人間の限界を超える音楽”

ANAAL NATHRAKHとは？結成から現在までの歴史と進化

ANAAL NATHRAKH（アナール・ナスラック）は、1998年にイングランド・バーミンガムで結成された、インダストリアル・ブラックメタルとグラインドコアを融合させたエクストリーム・メタル・バンドです。バンド名は古代アイルランド語で「蛇の息吹（serpent’s breath）」を意味し、『最後の栄光』『エクソシスト2』などで知られるジョン・ブアマン監督の映画『エクスカリバー』に登場する呪文から引用されています。

バンドは1999年にデモ音源『Anaal Nathrakh』と『Total Fucking Necro』を発表し、地元アンダーグラウンド・シーンで注目を集めました。その後、2001年にデビューアルバム『The Codex Necro』をリリースし、ブラックメタルの凶暴性とデジタル処理による過激な音作りで一躍話題となりました。この時点ですでに、ANAAL NATHRAKHは伝統的なブラックメタルとは一線を画し、グラインドコアの超高速リズムとインダストリアルな冷たさを融合させた唯一無二のスタイルを確立しています。

2004年には2ndアルバム『Domine Non Es Dignus』、2006年には『Eschaton』をリリース。これらの作品では、ゲストミュージシャンの導入や構築美のあるアレンジによって、音楽性がさらに洗練されていきます。また2007年には自主レーベル「FETO Records」を設立し、アルバム『Hell Is Empty, and All the Devils Are Here』を発表。これにより、より自由な創作活動が可能となり、宗教批判やニヒリズム、哲学的な歌詞世界も本格化します。

2010年代に入ってもその勢いは衰えず、『In the Constellation of the Black Widow』（2009）、『Vanitas』（2012）、『The Whole of the Law』（2016）、『A New Kind of Horror』（2018）といった作品を次々とリリース。いずれも、人類の退廃・戦争・終末思想といったテーマを、破壊的な音と共に描いています。特に2020年の『Endarkenment』では、これまで以上にクリアで力強いミックスと、メロディの導入による“聴きやすさ”と“絶望感”の共存が高く評価されました。

ANAAL NATHRAKHは基本的にスタジオ主体のプロジェクトですが、2005年以降は限定的にライブ活動も行っています。サポートメンバーを迎えた形でのライブ構成が多く、出演するフェスやツアーも稀少性が高いため、ファンの間では「ライブは幻」とまで言われています。一部では活動停止説も囁かれましたが、公式レーベルであるMetal Blade RecordsやSeason of Mistのアーティストページでは、現在も“Active＝活動中”と明記されています。

ANAAL NATHRAKHは、ブラックメタル、グラインドコア、インダストリアルの枠を越えて、人間の最も暗く、醜く、絶望的な部分を音楽として表現してきたバンドです。そのサウンドは、暴力的でありながら構築的、無慈悲でありながら知的。まさに「終末を鳴らすサウンド」と呼ぶにふさわしい存在です。今後も、彼らの新たな一手が世界のメタルシーンに衝撃を与えることでしょう。

ANAAL NATHRAKHのバンドメンバーの変遷と現在のラインナップ

【現メンバー】
■イルメイター（Irrumator） – Guitar/Bass/Programming（1999～）
■ヴィトリオール（V.I.T.R.I.O.L.） – Vocal（1999～）

【過去メンバー】
■レイシア（Lecia） – Bass（1999～2000）

【ライヴサポートメンバー】
■ダン・ローズ（Dan Rose） – Guitar（2011～2012、2014、2022～）
■ダン・アベラ（Dan Abela） – Bass（2022～）
■デイヴィッド・グレイ（David Gray） – Drums（2022～）
■サム・ロイネス（Sam Loynes） – Guitar（2022～）