ANTHRAXの基本情報とバンド概要
ANTHRAX(アンスラックス)は、1981年にアメリカ・ニューヨークで結成されたスラッシュ/グルーヴ・メタル・バンドです。スコット・イアン(Scott Ian)<Gt>とダン・リルカ(Dan Lilker)<Ba>が中心となり、当初はスラッシュ・メタルの黎明期を支える存在として頭角を現しました。
ANTHRAXは、METALLICA、SLAYER、MEGADETHと並んで「スラッシュ・メタル四天王(Big 4)」と称され、1980年代のスラッシュ・メタル・ムーブメントにおいて重要な役割を果たしました。1984年にデビュー・アルバム『Fistful of Metal』を発表し、続く1985年にはフロントマンがジョーイ・ベラドナ(Joey Belladonna)<Vo>に交代したことで、バンドは大きな飛躍を遂げました。
1987年の3rdアルバム『Among the Living』は彼らの代表作のひとつであり、スラッシュ・メタルにユーモアやポップカルチャーの要素を持ち込んだ作品として高く評価されています。また、1980年代後半から1990年代初頭にかけては、パブリック・エナミーとのコラボレーション曲「Bring the Noise」を発表するなど、ヒップホップとメタルの融合にも果敢に挑戦し、その先進的な姿勢が注目されました。
1990年代はグルーヴ・メタルの要素を取り入れ、フロントマンにジョン・ブッシュ(John Bush)<Vo>を迎えて音楽性を変化させました。『Sound of White Noise』(1993年)や『Stomp 442』(1995年)などの作品では、よりヘヴィでモダンなサウンドを展開しています。
2000年代後半にはクラシック・ラインナップの復活を果たし、ジョーイ・ベラドナが再びバンドに復帰しました。その後のアルバム『Worship Music』(2011年)や『For All Kings』(2016年)は、古き良きスラッシュと現代的なエネルギーを融合させた力強い作品として高く評価されています。
現在もANTHRAXは精力的に活動を続けており、ライブやフェス出演を通じて世界中のファンに向けてスラッシュ・メタルの魅力を発信し続けています。40年以上にわたるキャリアの中で、彼らは常に進化しながら、メタル界における独自の地位を確立してきたバンドです。
アルバム紹介|時代ごとの変遷
For All Kings(2016)
- Impaled
- You Gotta Believe
- Monster At The End
- For All Kings
- Breathing Lightning
- Breathing Out
- Suzerain
- Evil Twin
- Blood Eagle Wings
- Defend / Avenge
- All Of Them Thieves
- This Battle Chose Us
- Zero Tolerance
「重厚なる進化、崇高なるサウンド – “王たちすべて”に捧ぐ一撃」
前作『Worship Music』での復活を経て、さらなる進化を遂げた11thアルバム『For All Kings』は、スラッシュ・メタルの重厚さとメロディの美しさが高次元で融合した傑作です。ジョーイ・ベラドナ<Vo>の力強いヴォーカルが際立ち、バンドの威厳と情熱がサウンドに刻まれています。「You Gotta Believe」や「Blood Eagle Wings」など、荘厳な雰囲気とスピード感が絶妙に絡み合い、ANTHRAXならではの世界観を確立。円熟の域に達した演奏と、揺るがぬ信念が詰まった本作は、まさに“王たちすべて”に捧げるスラッシュ讃歌です。今なお進化を止めない彼らの強さがここにあります。
Worship Music(2011)
- Worship
- Earth On Hell
- The Devil You Know
- Fight ‘Em ‘til You Can’t
- I’m Alive
- Hymn 1
- In The End
- The Giant
- Hymn 2
- Judas Priest
- Crawl
- The Constant
- Revolution Screams
- New Noise(REFUSED cover)
「伝説再臨!ジョーイ・ベラドナの声が導くスラッシュの復権」
10thアルバム『Worship Music』は、ジョーイ・ベラドナ<Vo>の劇的な復帰によって実現したスラッシュ・メタルの復権を象徴する一作です。クラシックな攻撃性と現代的な重厚さが融合し、長年のファンも新たなリスナーも魅了する完成度を誇ります。「The Devil You Know」や「In The End」など、リフの切れ味とドラマ性が際立つ楽曲が並び、バンドの円熟と情熱が随所に光ります。再結成アルバムでありながら、単なる懐古にとどまらず、ANTHRAXの“今”を力強く提示。メタルの信頼を取り戻すにふさわしい、伝説的なカムバック作です。
The Greater Of Two Evils(2004)
- Deathrider
- Metal Thrashing Mad
- Caught In A Mosh
- A.I.R.
- Among The Living
- Keep It In The Family
- Indians
- Madhouse
- Panic
- I Am The Law
- Belly Of The Beast
- N.F.L.
- Be All End All
- Gung-Ho
「名曲は進化する – ブッシュの声で甦る“もうひとつのANTHRAX”」
『The Greater Of Two Evils』(2004年)は、ジョン・ブッシュ体制によって初期のスラッシュ・クラシックを再構築した挑戦的な作品です。『Among the Living』や『Spreading the Disease』といった名盤収録曲を、よりヘヴィでモダンなアレンジで再録。ジョン・ブッシュ<Vo>の低く力強いヴォーカルが、オリジナルとは異なる新たな表情を楽曲に与えています。ファン投票によって収録曲が選ばれた点も注目され、バンドとリスナーの距離が縮まる試みにもなりました。過去の名曲を“今”のANTHRAXで蘇らせた本作は、懐古ではなく再創造。原点への敬意と進化の意志が詰まった意欲作です。
We’ve Come For You All(2003)
- Contact
- What Doesn’t Die
- Superhero
- Refuse To Be Denied
- Safe Home
- Any Place But Here
- Nobody Knows Anything
- Strap It On
- Black Dahlia
- Cadillac Rock Box
- Taking The Music Back
- Crash
- Think About An End
- W.C.F.Y.A.
「全員を巻き込む勢い!ANTHRAXが放つ現代型メタルの決定打」
ジョン・ブッシュ<Vo>時代の集大成ともいえる完成度の高い9thアルバム『We’ve Come For You All』は、スラッシュの攻撃性にグルーヴとメロディの洗練が加わり、鋭くも耳に残るサウンドを実現しています。「Safe Home」や「What Doesn’t Die」では、力強いヴォーカルとタイトな演奏が際立ち、現代的なメタルの理想形を提示。ゲストにPANTERAのダイムバッグ・ダレル<Gt>らを迎えるなど、多彩な試みにも挑戦しています。ANTHRAXの柔軟さと芯の強さが見事に融合した本作は、バンドの進化と完成を象徴する重要作です。今なお高い評価を受ける理由がここにあります。
Volume 8 – The Threat Is Real(1998)
- Crush
- Catharsis
- Inside Out
- Piss’n’Vinegar
- 604
- Toast To The Extras
- Born Again Idiot
- Killing Box
- Harms Way
- Hog Tied
- Big Fat
- Cupajoe
- Alpha Male
- Stealing From A Thief
- Pieces
「スラッシュも、グルーヴも、カントリーまでも…実験精神が炸裂する混成アルバム!」
逆境の中で制作されたメジャー契約終了後にインディーズからリリースされた異色作『Volume 8: The Threat Is Real』は、スラッシュ、グルーヴ、さらにはカントリー的要素まで内包し、バンドの実験精神と反骨心が色濃く表れています。「Crush」や「Inside Out」などは重厚な攻撃性を保ちつつも、これまでにない幅広い表現力を披露。商業的には埋もれがちですが、創造的な挑戦を恐れない姿勢が際立つアルバムです。ANTHRAXの“真価”は、変化の中でも自らの信念を貫く姿にこそあります。
Stomp 442(1995)
- Random Acts Of Senseless Violence
- Fueled
- King Size
- Riding Shotgun
- Perpetual Motion
- In A ZOne
- Nothing
- American Pompeii
- Drop The Ball
- Tester
- Bare
「踏み鳴らせ、怒りと鋼鉄のビート!ANTHRAX流グルーヴ・メタルの深化」
ダン・スピッツ<Gt>脱退という混乱の中で制作された7thアルバム『Stomp 442』(1995年)は、バンドにとって大きな転機となった作品です。スラッシュ色を後退させ、グルーヴと重厚感を前面に押し出したサウンドは、ジョン・ブッシュ体制ならではのパワーと深みを備えています。「Fueled」や「In A Zone」などの楽曲では、骨太なリフと迫力あるリズムが炸裂し、90年代メタルの荒々しさを体現。過渡期にありながらも、バンドの意志と挑戦が強く刻まれた本作は、ANTHRAXのタフな精神を象徴する1枚です。変化の波に立ち向かう彼らの姿勢が、音にリアルな説得力を与えています。
Sound Of White Noise(1993)
- Potters Field
- Only
- Room For One More
- Packaged Rebellion
- Hy Pro Glo
- Invisible
- 1000 Points Of Hate
- Black Lodge
- C11 H17 N2 O2 S Na
- Burst
- This Is Not An Exit
「声が変わり、世界も変わる――ANTHRAXの新章 “Sound Of White Noise”」
ジョーイ・べラドナが脱退して、ジョン・ブッシュ<Vo>を迎えたことでサウンドとバンドの方向性が大きく変化した重要作『Sound Of White Noise』は、従来のスラッシュ・メタルの枠を超え、より重厚でダークなグルーヴ・メタルへと進化。オープニングの「Potter’s Field」から「Only」まで、内省的で感情豊かな表現が際立ち、ANTHRAXの新章の幕開けを鮮やかに刻みました。ヴォーカルの交代という大胆な変化にもかかわらず、批評家・ファンから高評価を得た本作は、90年代メタルシーンにおける成功例として語り継がれています。変化を恐れず進化したANTHRAXの姿がここにあります。
Persistence Of Time(1990)
- Time
- Blood
- Keep It In The Family
- In My World
- Gridlock
- Intro To Reality
- Belly Of The Beast
- Got The Time(JOE JACKSON cover)
- H8 Red
- One Man Stands
- Discharge
「怒りから哲学へ――ANTHRAXが挑んだ“時間”との対話」
5thアルバム『Persistence Of Time』は、スラッシュ・メタルの枠を超えた深みを備えた思索的傑作です。社会への怒りや不条理に対する疑問を、シリアスかつ内省的に描いた本作は、これまでのユーモラスな路線から一転し、バンドの成熟を強く印象づけます。タイトで重厚な演奏とともに、ジョーイ・ベラドナの表現力豊かなヴォーカルが、楽曲に深い感情を注ぎ込みます。特に「Keep It in the Family」や「In My World」では、人間社会の矛盾や孤独が鋭く浮かび上がります。エネルギーと知性を兼ね備えた本作は、ANTHRAXが真の表現者として確立された瞬間を刻んだ重要作です。
State Of Euphoria(1988)
- Be All, End All
- Out Of Sight, Out Of Mind
- Make Me Laugh
- Antisocia(TRUST cover)
- Who Cares Wins
- Now It’S Dark
- Schism
- Misery Loves Company
- 13
- Finalé
「シリアスとシュールの同居――混沌を音で描いた異色の4作目」
4thアルバム『State Of Euphoria』は、スラッシュ・メタルに“楽しさ”を持ち込んだユニークな作品です。前作『Among The Living』の成功を経て制作された本作では、攻撃的なリフとスピード感はそのままに、風刺やユーモアがより前面に出されています。「Be All, End All」や「Antisocial」など、シンガロング可能なキャッチーさとメッセージ性が同居し、ANTHRAXらしい奔放なスタイルが際立ちます。社会批判とパーティー感覚が絶妙に融合した本作は、ヘヴィでありながらも聴く者を笑顔にする稀有なスラッシュ・アルバムです。ANTHRAXの自由な発想と音楽への情熱が詰まった一枚といえるでしょう。
Among The Living(1987)
- Among The Living
- Caught In A Mosh
- I Am The Law
- Efilnikufesin(N.F.L.)
- A Skeleton In The Closet
- Indians
- One World
- A.D.I. / Horror Of It All
- Imitaiton Of Life
「暴走するリフ、炸裂するユーモア――ANTHRAXの個性が頂点で爆発!」
3rdアルバム『Among The Living』は、スラッシュ・メタルに“キャラ”と“物語”を持ち込んだ革新的な一枚です。スティーヴン・キングの小説『ザ・スタンド』に影響を受けた表題曲や、コミックヒーロー「ジャッジドレッド(Judge Dredd)」をテーマにした「I Am the Law」など、独自の世界観がサウンドと融合しています。超高速リフとシャープなリズムに加え、ジョーイ・ベラドナの力強いヴォーカルがストーリーテリングに躍動感を与え、ANTHRAXの個性を決定づけました。スラッシュの激しさにポップカルチャーを練り込んだ本作は、ジャンルの枠を超えた名盤として今なお語り継がれています。
Spreading The Disease(1985)
- A.I.R.
- Lone Justice
- Madhouse
- S.S.C. / Stand Or Fall
- The Enemy
- Aftershock
- Armed And Dangerous
- Medusa
- Gung-Ho
「新たな声が解き放つ爆発力!ベラドナ加入で覚醒したANTHRAXの第二章」
ジョーイ・ベラドナ<Vo>を迎えた2ndアルバム『Spreading The Disease』は、バンドの音楽性が飛躍的に進化した作品です。前作の荒々しさを残しつつ、ジョーイ・ベラドナの伸びやかで表現力豊かな歌声がスラッシュ・メタルに新たな魅力を与えています。「Madhouse」や「A.I.R.」といった楽曲では、スピードとメロディの絶妙なバランスが光り、ANTHRAX特有のユーモアや個性も色濃く反映されています。本作はスラッシュ・メタルの幅広さを証明するとともに、バンドが本格的に世界に羽ばたくきっかけとなった重要作です。ANTHRAXの“第二章”はここから始まりました。
Fistful Of Metal(1984)
- Deathrider
- Metal Thrashing Mad
- I’m Eighteen(ALICE COOPER cover)
- Panic
- Subjugator
- Soldiers Of Metal
- Death From Above
- Anthrax
- Across The River
- Howling Furies
「拳で叩きつけるデビュー作!ANTHRAXの怒りが詰まったスラッシュの原点」
記念すべきデビュー作『Fistful Of Metal』は、ニューヨークから巻き起こるスラッシュ・メタルの胎動を刻みつけた一枚です。荒削りながらも凄まじい勢いで突き進むリフと、ダン・リルカの唸るベース、そしてニール・タークの高音ヴォーカルが混ざり合い、暴力的なエネルギーを放出しています。後の洗練されたANTHRAX像とは一線を画す、ストレートで剥き出しのアグレッションが魅力です。特に「Deathrider」や「Metal Thrashing Mad」は、バンドの名を世界に知らしめた初期の代表曲としてファンの間で語り継がれています。スラッシュ・メタルの進化の起点を体感できる、まさに“拳の一撃”のような衝撃作です。
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