CARCASS(カーカス)とは?イギリス発・極限音楽の革新者
CARCASS(カーカス)は、イギリス・リヴァプールで結成されたグラインドコア/メロディック・デス・メタル/デス・エン・ロール・バンドです。結成当初、CARCASSはグラインドコアやゴアグラインドと呼ばれる極端に暴力的かつノイズまみれのスタイルで注目を集めました。1988年にリリースされたデビューアルバム『Reek of Putrefaction』は、そのスプラッター映画さながらの歌詞と混沌としたサウンドでシーンに衝撃を与えました。
続く2ndアルバム『Symphonies of Sickness』(1989年)では、より明確な楽曲構成とテクニカルな演奏が導入され、デスメタル色が強まります。そして1991年の3rdアルバム『Necroticism – Descanting the Insalubrious』では、メロディックな要素と複雑な構成を融合し、CARCASS独自のスタイルを確立しました。
1993年には、メロディック・デス・メタルの金字塔とも称される4thアルバム『Heartwork』を発表します。この作品で彼らは、より洗練されたギター・ワークとメロディ、そして重厚なサウンドで世界的な評価を獲得し、多くの後続バンドに多大な影響を与え、ファンを増やしました。
1996年には、デス・エン・ロール色を強めた5thアルバム『Swansong』を発表しますが、その後CARCASSは解散状態に入ります。しかし2007年、正式に再結成されました。2013年には17年ぶりのフルアルバム『Surgical Steel』を発表し、批評的にも商業的にも高い評価を受けました。このアルバムでは、初期の攻撃性と『Heartwork』期のメロディアスさを見事に融合させています。
さらに2021年には、『Torn Arteries』をリリースし、現在もなお精力的に活動を続けています。CARCASSは、グラインドコアからメロディック・デス・メタル、さらにはロック的要素までを取り込む幅広い音楽性で、極限的なサウンドの世界における革新者としての地位を確立しています。彼らの活動は、デスメタルの発展における重要なマイルストーンであり、その影響力は今も衰えることなく続いています。
アルバム紹介|CARCASSが与えた影響と後進バンドへのレガシー
Torn Arteries(2021)
- Torn Arteries
- Dance Of Ixtab(Psychopomp & Circumstance March No.1 In B)
- Eleanor Rigor Mortis
- Under The Scalpel Blade
- The Devil Rides Out
- Flash Ripping Sonic Torment Limited
- Kelly’s Meat Emporium
- In God We Trust
- Wake Up And Smell The Carcass / Caveat Emptor
- The Scythe’s Remorseless Swing
「腐敗から蘇った芸術性、CARCASSが突きつける死の新定義」
再結成後の勢いをそのままに、CARCASSが2021年に発売した『Torn Arteries』は、デスメタルの進化と深化を見事に示すアルバムです。『Surgical Steel』での復活劇を経て、本作ではより成熟した楽曲構成と多彩なリフが光り、グロテスクな美とメロディが高次元で融合。バンドの原点ともいえる攻撃性と、『Heartwork』期の叙情性が共存し、死の美学を新たに塗り替えています。タイトル曲や「Dance of Ixtab」などは、CARCASSならではの知的暴力性と構成美が際立ち、再びシーンの頂点に立つ力を証明しました。再臨から深化へ――その歩みを体現した必聴の一枚です。
Surgical Steel(2013)
- 1985
- Thrasher’s Abattoir
- Cadaver Pouch Conveyor System
- A Congealed Clot Of Blood
- The Master Butcher’s Apron
- Noncompliance To ASTM F899-12 Standard
- The Granulating Dark Satanic Mills
- Unfit For Human Cosumption
- 316L Grade Surgical Steel
- Captive Bolt Pistol
- Mount Of Execution
「20年ぶりの手術成功!グラインドと叙情が同居する奇跡の帰還」
“Surgical Steel”で切り拓かれた、再臨のデス・メタル新章 – それはCARCASSが17年の沈黙を破り、2013年に放った鮮烈な復活作です。初期のグラインドコア的暴虐性と『Heartwork』期のメロディアスな構築美が融合し、まさに集大成とも言えるサウンドを実現。新メンバーを迎えつつも、ジェフ・ウォーカー<Ba>とビル・スティアー<Gt>の核は健在で、時代を超えた存在感を放ちます。「Captive Bolt Pistol」や「Unfit for Human Consumption」は、かつてのファンにも新規層にも刺さる強烈な一撃。再臨の名にふさわしい、現代デス・メタルの指標となる一枚です。
Swansong(1996)
- Keep On Rotting In The Free World
- Tomorrow Belongs To Nobody
- Black Star
- Cross My Heart
- Childs Play
- Room 101
- Polarized
- Generation Hexed
- Firm Hand
- R**k the Vote
- Don’t Believe A Word
- Go To Hell
「暴虐から知性へ、グラインドの王者が選んだ最後の進化形態」
CARCASSの5thアルバム『Swansong』は、1996年にリリースされ、バンドの“最終章”として長らく語り継がれてきました。グラインドやメロデスの影を残しつつ、よりロック寄りのグルーヴと明確なリフ構成が特徴な”デス・エン・ロール”と呼ばれ、重く鋭く、そして躍動するサウンドが展開され、従来のファンには賛否両論を呼びましたが、時を経て再評価が進み、”デス・エン・ロール”の先駆的作品としての価値が確立。「Keep on Rotting in the Free World」などはその象徴です。CARCASSの多面性と進化を示した重要作なりました。
Heartwork(1993)
- Buried Dreams
- Carnal Forge
- No Love Lost
- Heartwork
- Embodiment
- This Mortal Coil
- Arbeit Macht Fleisch
- Blind Bleeding The Blind
- Doctrinal Expletives
- Death Certificate
「グラインドの王者が魅せた、構築と叙情の美学」
1993年にリリースされた『Heartwork』は、メロディック・デスメタルの礎を築いたと言われる歴史的名盤です。初期のグラインド色を抑えつつ、叙情的なツインギターと構築美あふれる楽曲が際立ち、CARCASSの音楽性が飛躍的に進化しました。プロデューサーにはコリン・リチャードソンを迎え、サウンドは硬質かつ洗練され、タイトル曲「Heartwork」をはじめ、全編にわたり高い完成度を誇ります。攻撃性と美しさが共存するこの作品は、後続バンドに多大な影響を与え、今なおメロデスの金字塔として語り継がれています。CARCASSの芸術的変革を体感できる一枚です。
Necroticism – Descanting The Insalubrious(1991)
- Inpropagnation
- Corporal Jigsore Quandary
- Symposium Of Sickness
- Pedigree Butchery
- Incarnated Solvent Abuse
- Carneous Cacoffiny
- Levaging Expectorate Of Lysergide Composition
- Forensic Clincism / The Sanguine Article
「“死の講義”が始まる――語るように奏でるCARCASSの知的進化作」
グラインドコアからテクニカル・デスメタルへの進化を示す重要作と言われる3rdアルバム。前作までの混沌とした音像に代わり、緻密な楽曲構成とテクニカルなギターが際立ち、現ARCH ENEMYのマイケル・アモットの加入によりメロディアスな要素も加わりました。代表曲「Corporal Jigsore Quandary」などは攻撃性と構成美を高次元で融合し、後の『Heartwork』にもつながる音楽性の礎を築いています。歌詞の病理学的表現や知的な語彙も独自性を強調しており、CARCASSの芸術的側面を強く印象づける一枚です。今なお再評価される名盤であり、テクニカル・デスメタルを語る上で欠かせない作品です。
Symphonies Of Sickness(1989)
- Reek Of Putrefaction
- Exhume TO Consume
- Excoriating Abdominal Emanation
- Ruptured In Purulence
- Empahological Necroticism
- Embryonic Necropsy And Devourment
- Swarming Vulgar Mass Of Infected Virulency
- Slash Dementia
- Crepitating Bowel Erosion
「暴虐と技巧が手を結ぶ、CARCASS第2章の幕開け」
2ndアルバム『Symphonies of Sickness』は、1989年にリリースされ、ゴアグラインドの混沌にデスメタルの構築美が加わった重要作です。デビューアルバムのノイズ的アプローチを引き継ぎながらも、各楽曲に明確なリフと展開が生まれ、暴力性と知的要素が融合。病理学用語を多用した歌詞とスプラッターな世界観は健在でありながら、サウンドはより重厚かつ精密になりました。「Exhume to Consume」などはCARCASSの代表曲として語り継がれています。後の『Necroticism – Descanting The Insalubrious』や『Heartwork』へと繋がる布石を築いた本作は、極限音楽の進化を示すマイルストーンです。
Reek Of Putrefaction(1988)
- Gentital Grinder
- Regurgitation Of Giblets
- Maggot Colony
- Pyosisifield(Rotten To The Gore)
- Carbonized Eye Sockets
- Frenzied Detruncation
- Vomited Anal Tract
- Festerday
- Fementing Innards
- Excreted Alive
- Suppuration
- Foeticide
- Microwaved Uterogestation
- Feast On Desmembered Carnage
- Splattered Cavities
- Psychopathologist
- Burnt To A Crisp
- Pungeant Excruciation
- Manifestation Of Verrucose Urethra
- Oxidised Razor Maticator
- Mucopurulence Excretor
- Malignant Defection
「医療廃棄物のような音塊――CARCASSの衝撃的デビュー作!」
1988年デビューアルバムは、ゴアグラインドという極端なサブジャンルを世界に知らしめた問題作です。歪んだギター、崩壊寸前のドラム、唸るような多重ボーカルが交錯する音像は、まさに医療廃棄物の山に飛び込むかのような感覚を生み出します。劣悪な録音環境ながら、その“汚さ”こそが本作の魅力であり、のちのグラインドコア/デスメタルに計り知れない影響を与えました。病理学的な歌詞やスプラッターなアートワークも衝撃的で、地下音楽シーンに衝撃をもたらした本作は、今なお語り継がれる伝説の始まりです。
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