MGLAとは?謎に包まれた覆面ブラックメタル・バンドの正体
MGLA(ムグワ)は、ポーランド出身のブラック・メタル・バンドで、2000年にミコワイ・ジェンタラ(Mikolaj Zentara)[通称:M]によって結成されました。バンド名の「MGLA」は、ポーランド語で「霧」を意味し、その名前が示すように、暗く神秘的な音楽と詩的な歌詞を特徴としています。
MGLAは、M.が他のプロジェクト(KRIEGSMACHINE, PRELESTなど)と並行してソロ・プロジェクトとしてスタートしました。初期には、ローファイで陰鬱なブラック・メタルのスタイルを確立し、2005年に初のEP「Presence」をリリース。この時期の作品は、冷たくミニマルなサウンドで、ブラック・メタルの伝統的な美学を反映しています。
2006年には2枚目のEP「Mdłości」、2007年には3枚目のEP「Further Down the Nest」を発表。この時期のMGLAは、地下シーンで注目を集め、リスナーに強い印象を与えました。
2008年、MGLAはデビューフルアルバム「Groza」をリリース。アルバムは、鋭いギターリフと冷たい雰囲気、哲学的な歌詞を融合させた作品で、ブラック・メタル・シーンで高い評価を得ました。このアルバムは、バンドを国際的な注目を集める存在へと押し上げました。
2012年のセカンドアルバム「With Hearts Toward None」は、MGLAをさらに進化させた作品です。このアルバムは、リフのメロディアスさ、緻密な構造、そして絶望感を深く掘り下げた歌詞で広く称賛され、ブラック・メタルの名作として知られています。
2015年には、3rdアルバム「Exercises in Futility」をリリース。このアルバムは、MGLAの最も有名な作品の一つであり、冷たく鋭いサウンドと哲学的なテーマを通じて、虚無主義や人間存在の無意味さを探求しています。アルバムからの楽曲は、特にライブで強いインパクトを持ち、MGLAの名声を確固たるものにしました。
2019年、MGLAは4thアルバム「Age of Excuse」をリリース。この作品は、バンドの特徴であるダークな雰囲気とメロディアスなリフを維持しつつ、より複雑で進化したサウンドを追求しています。アルバムは批評家からもファンからも高い評価を受け、MGLAがブラック・メタル界のトップバンドの一つであることを証明しました。
また、ライブ活動にも力を入れており、フルフェイスマスクを着用した匿名性を保つ独特のパフォーマンススタイルで知られています。このビジュアルスタイルは、音楽そのものに焦点を当てる意図が込められています。
MGLAの音楽は、ブラック・メタルの伝統的な要素を基盤にしつつ、洗練されたリフワークやリズムの緻密さが際立っています。また、歌詞には虚無主義、絶望、存在の哲学的テーマが含まれており、深い内省を促す内容となっています。
彼らのスタイルは、ブラック・メタルの伝統に忠実でありながらも、革新的で現代的な解釈を加えたものです。これにより、ブラック・メタルの愛好家だけでなく、新しいリスナー層からも支持を受けています。
MGLAは現在もアンダーグラウンドとメインストリームの間で独自の地位を確立しており、その音楽とパフォーマンスを通じてブラック・メタルの芸術的可能性を追求し続けています。
バンドメンバー
【現メンバー】
ミコワイ・”M”・ジェンタラ(Mikolaj “M” Zentara) – Vocal/Guitar/Bass(2000~)
マチェイ・”ダークサイド”・コヴァルスキ(Maciej “Darkside” Kowalski) – Drums(2006~)
【過去メンバー】
ダリウシュ・”ダレン”・ピペル(Dariusz “Daren” Piper) – Drums(2000~2006)
アルバム紹介|ブラックメタルの伝統とモダン要素の融合
Age Of Excuse(2019)
- Age Of Excuse Ⅰ
- Age Of Excuse Ⅱ
- Age Of Excuse Ⅲ
- Age Of Excuse Ⅳ
- Age Of Excuse Ⅴ
- Age Of Excuse Ⅵ
虚無と秩序の狭間で鳴り響く、MGLA史上最も哲学的な音像。
2019年発売の4thアルバム『Age of Excuse』は、混迷を極める現代への鋭い批評である。本作は、哲学的かつ虚無主義的な歌詞と、冷徹に構築されたメロディリフが見事に融合。全6曲を通じて、欺瞞に満ちた社会や人間の弱さを音楽として告発している。音像は極めてシャープで無駄がなく、マスクを被った匿名の演奏者たちによる儀式的な雰囲気が、聴く者を深い思索へと誘う。MGLAの作品の中でも特に構造美が際立つ本作は、ブラックメタルの芸術性を再定義する1枚だ。リフが語り、ドラムが突き刺し、そしてメロディが叫ぶ――『Age of Excuse』はまさに、音による暗黒詩である。
Exercises In Futility(2015)
- Exercises In Futility Ⅰ
- Exercises In Futility Ⅱ
- Exercises In Futility Ⅲ
- Exercises In Futility Ⅳ
- Exercises In Futility Ⅴ
- Exercises In Futility Ⅵ
絶望は静かに訪れる――冷たく鋭利な哲学的叙事詩。
3rdアルバム『Exercises in Futility』は、ブラックメタルの枠を超え、哲学的な深みと芸術性を極めた傑作です。全6曲に通底するのは、「無意味な努力=徒労」をテーマにした冷徹な世界観。鋭く反復されるリフと理知的な構成、抑制された激情が、虚無主義の本質を音で描き出します。覆面のメンバーによる匿名性も手伝い、作品は純粋な表現としてリスナーに突き刺さる。社会や人生に対する厭世的な視点は、混沌とする現代において驚くほど鋭いリアリティを帯びています。『Exercises in Futility』は、意味を求めること自体の無意味さを、美と絶望のバランスで描いた、まさに現代ブラックメタルの金字塔です。
With Hearts Toward None(2012)
- With Hearts Toward None Ⅰ
- With Hearts Toward None Ⅱ
- With Hearts Toward None Ⅲ
- With Hearts Toward None Ⅳ
- With Hearts Toward None Ⅴ
- With Hearts Toward None Ⅵ
- With Hearts Toward None Ⅶ
心なき時代を撃ち抜く、孤高のブラックメタル讃歌。
2ndアルバム『With Hearts Toward None』は、ポーランド発ブラックメタルの名作として高く評価される一枚です。本作は全7曲を「I〜VII」の章立てで構成し、秩序だった音構成と混沌を内包するテーマ性が絶妙に融合。緻密に繰り返されるギターリフ、冷徹なリズム、そして虚無主義的かつ宗教否定的な歌詞が、聴く者に強烈な没入感を与えます。覆面の演奏者たちによる無機質な表現は、感情ではなく思想を突きつけるかのようです。MGLAの美学が確立された転機であり、現代ブラックメタルの到達点の一つとして語り継がれるべき作品です。
Groza(2008)
- Groza Ⅰ
- Groza Ⅱ
- Groza Ⅲ
- Groza Ⅳ
霧はこの一枚から立ち込めた――MGLAの暗黒世界、始まりの咆哮。
2008年にリリースされたMGLAの1stアルバム『Groza』は、ポーランド発ブラックメタルの新たな地平を切り拓いた重要作です。冷徹なリフワークと無機質なドラミングが生み出す音の霧は、聴く者を不穏な精神世界へと誘います。本作は、バンド名“MGLA(霧)”にふさわしい、視界を遮るような圧迫感と哲学的暗黒美を持ち合わせており、以降の作品の礎を築く存在です。歌詞に込められた虚無と孤独の感情は、暴力的でありながら知的。『Groza』は、表面的な凶暴さではなく、静かに内面を侵食する“恐怖”の音像を確立した一枚として、今なおブラックメタル・ファンに強い影響を与えています。
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