OPETHとは?唯一無二の音楽性で注目を集める北欧バンド
OPETH(オーペス)は、1990年にスウェーデンのストックホルムでギタリストのミカエル・オーカーフェルト(Mikael Åkerfeldt)<Gt,Vo> によって結成されたプログレッシヴ・デス・メタル/プログレッシヴ・ロック・バンド。元々は デヴィッド・イズベルグ(David Isberg)<Vo> が中心となって結成されましたが、ミカエル・オーカーフェルトを加入させる際のメンバー間の対立により2人を除くメンバーが脱退。のちにデヴィッド・イズベルグも脱退したため、ミカエル・オーカーフェルトがバンドの主導権を握る形とり、OPETHが本格的にスタートしました。
初期のOPETHは、デス・メタルの影響が強いものの、アコースティック・ギターやプログレッシヴな楽曲展開を取り入れた独自のスタイルを模索。1994年にデビューアルバム『Orchid』をリリースし、その特徴的なサウンドで注目を集めました。
続く『Morningrise』(1996年)と『My Arms, Your Hearse』(1998年)では、より洗練された楽曲構成とエモーショナルな要素を強め、1999年に発売された4thアルバム『Still Life』は、ストーリーテリング的な歌詞とテクニカルな演奏が融合し、OPETHの名を広める重要な作品となりました。
2001年にリリースされた5thアルバム『Blackwater Park』は、バンドにとって大きな転機となった作品です。プログレッシヴ・メタルとデス・メタルの完璧な融合を果たし、OPETHの代表作として評価されるようになりました。この作品では、イギリスのプログレッシヴ・ロック・バンドPORCUPINE TREEのスティーヴン・ウィルソン(Steven Wilson)がプロデューサーとして関与し、プログレッシヴ・ロックの要素がより強調されるようになりました。
2002年の『Deliverance』と2003年の『Damnation』の対をなすコンセプト・アルバムは、OPETHの音楽性をさらに拡張させた。特に『Damnation』は、デス・メタルの要素を排除し、70年代のプログレッシヴ・ロックに大きく影響を受けたサウンドで、バンドの新たな側面を提示しました。
その後、2005年の『Ghost Reveries』は、OPETHの中でも最も完成度の高い作品の一つとして評価され、商業的にも大成功。バンドメンバーの交代劇がありながらも、2008年には『Watershed』をリリースし、さらにジャズやフォークの影響を加えつつも、プログレッシヴ・デス・メタルの要素を維持。このアルバムを最後に、オーカーフェルトは次の方向性として、よりプログレッシヴ・ロック寄りの音楽性を模索するようになりました。
2011年にリリースされた『Heritage』は、OPETHの音楽性の大きな転換点となり、このアルバムでは、完全にデス・メタルの要素を排除。70年代のプログレッシヴ・ロックやジャズ、フォークの影響を前面に押し出し、その結果、ファンの間では賛否が分かれたが、OPETHの進化を示す重要な作品となりました。
続く『Pale Communion』(2014年)、『Sorceress』(2016年)では、さらにクラシックなプログレッシヴ・ロックの影響を強め、デス・メタル時代のOPETHとは異なるバンドとしての新たなスタイルを確立。
2019年には『In Cauda Venenum』をリリース。初めてスウェーデン語と英語の2バージョンでアルバムを制作するという新たな試みを行い、このアルバムでは、バンドのプログレッシヴな方向性を維持しつつも、過去のヘヴィなサウンドを部分的に取り入れるなど、キャリアを総括するようなアプローチが見られました。
OPETHは、デス・メタルとプログレッシヴ・ロックの融合を成功させたバンドとして、メタルシーンだけでなく、プログレッシヴ・ロックのリスナー層からも高く評価されており、ミカエル・オーカーフェルトの音楽的探究心は尽きることなく、バンドのサウンドは今後も進化を続けていくことが予想されます。
OPETHの音楽は、ヘヴィでありながらも叙情的で、複雑な楽曲構成の中に美しいメロディが溶け込み、その唯一無二のサウンドは、今後も多くのリスナーを魅了し続けることでしょう。
OPETHのアルバムと音楽的進化の軌跡
The Last Will And Testament(2024)
- §1
- §2
- §3
- §4
- §5
- §6
- §7
- A Story Never Told
“沈黙の先に響く遺言”―OPETHが紡ぐ終末の叙情詩!
元PARADISE LOST、元BODOM AFTER MIDNIGHTのワルテッリ・ヴァワリュネン(Waltteri Väyrynen)<Dr>初参加の14thアルバムは、彼らのキャリアの集大成とも言える重厚なプログレッシヴ・ロック作品です。荘厳なオルガン、アコースティックギターの繊細な響き、そしてミカエル・オーカーフェルトの深みあるボーカルが織りなす音像は、まさに“音の遺書”と呼ぶにふさわしい内容。70年代プログレの影響を色濃く残しながらも、現代的な重厚感と内省的な叙情性を兼ね備えた本作は、ヘヴィネスよりも精神的な重みで聴く者を圧倒します。アルバム全体に漂う終末的なムードと、死生観を内包した歌詞世界は、OPETHがどこまで進化し、何を残そうとしているのかを強く問いかけてきます。音楽的完成度の高さはもちろん、静と動のコントラストに満ちた構成は、深く沈み込むようなリスニング体験を提供してくれる一枚です。
In Cauda Venenum(2019)
- Garden Of Earthly Delights
- Dignity
- Heart In Hand
- Next Of Kin
- Lovelorn Crime
- Charlaten
- Universal Truth
- The Garroter
- Continuum
- All Things Will Pass
二つの言語、ひとつの真実―『In Cauda Venenum』が語る音の二重奏!
10年以上在籍したマーティン・アクセンロット (Martin Axenrot) <Dr>が参加した最後の作品で、バンド史上初となるスウェーデン語版と英語版の二言語仕様でリリースされた意欲作。ラテン語で「尾に毒を持つ」と題された本作は、美麗なメロディと重厚なアレンジが織り成すプログレッシヴ・ロックの集大成。母語による表現の濃密さと、英語による普遍性が交錯することで、音楽そのものが言語の枠を超える力を持つことを証明しています。ミカエル・オーカーフェルトのヴォーカルは語るように歌い、時に優しく、時に鋭くリスナーの心に刺さる。“Svekets prins”や“Dignity”といった楽曲に見られる叙情と毒が同居した構成は、まさにOPETHの真骨頂です。
Sorceress(2016)
- Persephone
- Sorceress
- The Wilde Flowers
- Will O The Wisp
- Chrysails
- Sorceress 2
- The Seventh Sojourn
- Strange Brew
- A Fleeting Glance
- Era
- Persephone(Slight Return)
妖艶なる魔女が導く音の迷宮―OPETHが描く誘惑と裏切りの物語!
プログレッシヴ・ロックへの完全移行後も独自のヘヴィネスと美学を保ち続けることを証明した12thアルバム。オルガンやアコースティック・ギターが彩る70年代志向の音像に、妖しくも深遠な雰囲気が漂い、タイトルの“魔女”のようにリスナーを魅了します。ミカエル・オーカーフェルトの表現力豊かなヴォーカルと、意表を突く楽曲展開は、メタル的攻撃性とプログレ的知性を高次元で融合。特に「Sorceress」や「The Wilde Flowers」では、重厚さの中に潜む毒と叙情が共鳴し、OPETHの進化を強く印象づけます。美しさと不穏さが絡み合う本作は、ジャンルの枠を超えて深いリスニング体験を与える、現代プログレ・メタルの傑作です。
Pale Communion(2014)
- Eternal Rains Will Come
- Cusp Of Eternity
- Moon Above, Sun Below
- Elysian Woes
- Goblin
- River
- Voice Of Treason
- Faith In Others
重さよりも深さを選んだOPETHが辿り着いた“美の極北”!
前作『Heritage』で打ち出されたプログレッシヴ・ロック路線をさらに洗練させた作品です。YNGWEI MALMSTEENやTIAMATのライヴメンバーとして在籍したヨアキム・スヴァルベリ (Joakim Svalberg)<Key>初参加のアルバム。70年代のクラシカルな音像を下地にしながらも、OPETH独自の叙情性と緻密なアレンジが融合し、懐古にとどまらない“進化形プログレ”を完成させました。オーケストレーションを想起させる構成美、哲学的な歌詞が、深く心に響く世界観を生み出しています。特に「Eternal Rains Will Come」や「Moon Above, Sun Below」では、動と静が絶妙に絡み合い、聴き手を深い没入へと誘います。メタルを越えて音楽芸術へと歩み出したOPETHの意志が明確に刻まれています。
Heritage(2011)
- Heritage
- The Devil’s Orchard
- I Feel The Dark
- Slither
- Nepenthe
- Haxprocess
- Famine
- The Lines In My Hand
- Folklore
- Marrow Of The Earth
すべてを壊し、すべてを継ぐ―『Heritage』が開いたOPETHの新章!
バンドがそれまで築き上げてきたデス・メタルの遺産を意図的に壊し、プログレッシヴ・ロックへと大胆に転換した問題作。グロウルを封印し、ジャズやクラシック、フォークの要素を織り交ぜた楽曲群は、70年代の香りを漂わせながらもOPETHならではの緊張感と美意識を保っています。ミカエル・オーカーフェルトの決断は賛否を呼びましたが、その結果生まれた『Heritage』は“継承”という名にふさわしい、音楽的探求の意思に満ちた一作です。「The Devil’s Orchard」や「Folklore」など、緻密に構成された楽曲は、聴くたびに新たな発見をもたらします。過去と訣別しながらも、その精神を受け継いだ本作こそ、OPETHの真の“遺産”といえるでしょう。
Watershed(2008)
- Coil
- Heir Apparent
- The Lotus Eater
- Burden
- Porcelain Heart
- Hessian Peel
- Hex Omega
すべてが交わる、その瞬間―OPETHが辿り着いた芸術の交差点!
デス・メタルとプログレッシヴ・ロックが究極的に融合した、バンドの転換点を象徴する作品。轟音と静謐、グロウルとクリーンボイス、複雑な構成と繊細な旋律が一体となり、まさに“音楽的臨界点”を感じさせる内容となっています。オープニング曲「Coil」からラストの「Hex Omega」まで、OPETHらしい深い陰影と緻密なアレンジが貫かれており、激情と叙情が交錯するサウンドは聴く者を圧倒。TALISMAN、ARCH ENEMYのフレドリック・オーケソン (Fredrik Åkesson)が加入し、新たな息吹も加わり、創造性のピークを迎えた本作は、次作以降のプログレ路線への布石であり、同時にデスメタル期の集大成とも言える作品です。
Ghost Reveries(2005)
- Ghost Of Perdition
- The Baying Of The Hounds
- Beneath The Mire
- Atonement
- Reverie / Herlequin Forest
- Hours Of Wealth
- The Grand Conjuration
- Isolation Years
音楽で紡がれる亡霊たちの夢―OPETHの創造性が極まった瞬間!
冒頭の「Ghost of Perdition」からして、凶暴なグロウルと静謐なアルペジオが交錯し、聴く者を深淵へと誘います。宗教性と個人的な苦悩を軸にしたコンセプト的世界観も、本作を特別な位置づけにしています。新メンバーとして加入したペル・ヴィベリ(Per Wiberg)<Key>の貢献も大きく、音の厚みと幽玄さが格段に増加。「The Grand Conjuration」や「Reverie/Harlequin Forest」など、長尺曲に詰め込まれた緊張と美が、OPETHの表現力の凄みを証明。まさに“死と救済”という二極を音で描いた、幻想的で狂気的なレクイエムです。OPETHの創造力が最も濃密に結実した一作といえるでしょう。
Damnation(2003)
- Windowpane
- In My Time Of Need
- Death Whispered A Lullaby
- Closure
- Hope Leaves
- To Rid The Disease
- Ending Credits
- Weakness
美しさは時に痛みを伴う―『Damnation』が導く内省の旅路!
デス・メタルの激しさを一切排し、全編クリーンボーカルとアコースティック主体で構成された異色作。徹底した静謐さの中に、哀しみと祈りが込められた本作は、バンドの新たな表現領域を切り拓く決意の結晶。ミカエル・オーカーフェルトの繊細な歌唱と、PORCUPINE TREEのスティーヴン・ウィルソンのプロデュースによる美麗なサウンドスケープが、リスナーを内省の深淵へと導きます。「Windowpane」や「In My Time of Need」に象徴されるように、音の隙間から滲む感情は深く、静かであるがゆえに痛烈です。激情とは異なる形で心を揺さぶる『Damnation』は、OPETHというバンドの芸術性の広がりと、その本質を知る上で欠かせない作品です。
Deliverance(2002)
- Wreath
- Deliverance
- A Fair Judgement
- For Absent Friends
- Master’s Apprentices
- By The Pain I See In Others
救済とは、破壊の果てにある―OPETHが到達した激情の極地!
バンドの中でも屈指のヘヴィネスを誇る作品でありながら、叙情的な美しさも同居する緻密な構成が光り、対となる『Damnation』が“静”を極めたのに対し、本作は“動”の衝動を解き放つような楽曲が並びます。冒頭曲「Wreath」や、15分超のタイトル曲「Deliverance」では、怒涛のリフとグロウル、そして突如訪れる静寂が見事なコントラストを生み、聴く者を感情の渦へと巻き込みます。緊張感あふれる演奏が一体となり、音楽を通じた“救済”の意味を深く問いかけてきます。暴力的でありながら内省的―その二面性こそが、OPETHという存在の核を最も純粋に映し出した傑作です。
Blackwater Park(2001)
- The Leper Affinity
- Bleak
- Harvest
- The Drapery Falls
- Dirge For November
- The Funeral Portrait
- Patterns In The Ivy
- Blackwater Park
深淵に潜む静と動―『Blackwater Park』が刻んだ音楽美の極致!
PORCUPINE TREEのスティーヴン・ウィルソンを共同プロデューサーに迎えたことで、音の奥行きと美学が格段に深化。「The Leper Affinity」「Bleak」など、凶暴なリフと美麗なメロディが交錯し、静と動のコントラストが強烈な印象を残します。アコースティックパートの繊細さや、ミカエル・オーカーフェルトの感情豊かなヴォーカルも圧巻で、芸術性と暴力性のバランスが見事に調和。OPETHというバンドの音楽的個性を決定づけた一枚であり、プログレッシヴ・メタルの金字塔として多くのリスナーに影響を与え続けています。深淵から響く音の美は、今も色褪せません。
Still Life(1999)
- The Moor
- Godhead’s Lament
- Benighted
- Moonlapse Vertigo
- Face Of Melinda
- Serenity Painted Death
- White Cluster
語られざる愛と裏切りの物語―『Still Life』が奏でる音の黙示録!
初のコンセプト・アルバムとして、物語性と音楽性が緊密に絡み合う傑作です。宗教的迫害の中で再会を果たした恋人たちの悲劇を描くストーリーを軸に、重厚なデス・メタルと繊細なアコースティックが交錯。冒頭の「The Moor」からラストの「White Cluster」まで、緻密な構成とダイナミックな展開が息を呑む美しさで繋がっています。愛、裏切り、そして死をテーマにした本作は、音による黙示録とも言える深い感情体験をもたらします。静と動の完璧なバランスが光る『Still Life』は、OPETHの物語的プログレ・デスメタルの礎を築きました。4枚目にして歴史的名盤です。
My Arms, Your Hearse(1998)
- Prologue
- April Ethereal
- When
- Madrigal
- The Amen Corner
- Demon Of The Fall
- Credence
- Karma
- Epilogue
別離と再生が交差する、OPETH初の叙情的コンセプトアルバム!
3rdアルバムは、死者の視点から語られる愛と喪失の物語を描いた初のコンセプト作品です。アルバム全体が連続した構成となっており、各楽曲が一つの物語として流れるように展開。轟音のリフとグロウルに加え、哀切を帯びたアコースティックパートやクリーンボーカルが深い陰影を与え、聴く者を音の霊界へと誘います。元AMON AMARTHのマーティン・ロペス (Martin Lopez)<Dr>が加入し、より緻密かつ表情豊かなリズムアプローチが可能に。幻想的な詞世界と緻密な音作りが融合した本作は、OPETHが物語性と音楽性を本格的に結びつけた転換点であり、後の名作群へとつながる重要な一枚です。美と哀しみが交錯するこの作品は、OPETHの芸術性の原点とも言えるでしょう。
Morningrise(1996)
- Advent
- The Night And The Silent Water
- Nectar
- Black Rose Immortal
- To Bid You Farewell
哀愁と激動の長編叙事詩―OPETHが描いた“夜明け”の詩情!
幻想的な世界観と10分を超える長編楽曲で構成された、初期OPETHの叙情美が頂点を極めた作品です。アコースティックギターの静謐な調べと、激烈なデス・メタルパートが交錯し、まるで夢と現実の狭間をさまようような音の旅が展開されます。「Advent」「The Night and the Silent Water」などの楽曲では、ミカエル・オーカーフェルトの詩的な歌詞と緻密な構成が融合し、荘厳かつ哀しい物語を紡ぎます。メンバー全員が一体となって描く音像は、静と動、光と闇、そして生と死のテーマを濃密に反映。『Morningrise』は、OPETHが持つ芸術的センスと音楽的野心が結実した、ポスト・デス・メタルの黎明期を象徴する作品です。
Orchid(1995)
- In Mist She Was Standing
- Under The Weeping Moon
- Silhouette
- Forest Of October
- The Twilight Is My Robe
- Requiem
- The Apostle In Triumph
美と暴力の出会い―OPETHが築いた“静と動”の原点!
デビューアルバムは、デス・メタルとプログレッシヴ・ロックを融合させた革新的な音楽性で、シーンに衝撃を与えた異色の傑作です。アコースティックギターの叙情的な旋律と、暴虐なグロウル、長大で緻密な楽曲構成が共存する本作は、従来のジャンルの枠を超えた芸術性を提示。特に「In Mist She Was Standing」や「Under the Weeping Moon」では、クラシカルな感性とメタルの激しさが劇的に交差し、OPETHの個性が早くも確立されています。後の作品群の原点として、今なお多くのファンに支持される重要作。『Orchid』は、まさに“様式破壊”の序章と呼ぶにふさわしい、OPETH伝説の幕開けです。
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