今なお語り継がれる“DISSECTION”とは?
DISSECTION(ディセクション)は、スウェーデンで1989年に結成されたメロディック・ブラック・メタルの代表的なバンドです。彼らはメロディック・デスメタルやブラックメタルの要素を融合し、その音楽性と精神性が広範囲に影響を与えました。
DISSECTIONはジョン・ノトヴェイト(Jon Nödtveidt)<Vo,Gt>を中心に結成されました。1991年には最初のデモテープ「The Grief Prophecy」をリリースし、これが地下シーンで注目を集めました。その後、1993年にデビューアルバム『The Somberlain』を発表。このアルバムは、メロディアスなギターワークと冷たくダークな雰囲気が特徴で、メロディック・ブラック・メタルというジャンルの基礎を築きました。
1995年、2ndアルバム『Storm of the Light’s Bane』をリリースしました。このアルバムは、メロディック・ブラック・メタルの名作として広く評価されています。攻撃的なリフとメランコリックなメロディ、荘厳な雰囲気が特徴で、ブラックメタルの歴史において重要な作品とされています。1997年、ジョン・ノトヴェイトが犯罪に関与し、懲役刑を受けたことで、バンドは活動を停止しました。しかし、彼は刑務所で哲学やオカルティズムに没頭し、出所後の音楽活動に深く影響を与えました。
2004年、DISSECTIONはジョン・ノトヴェイトの釈放に伴い、新たなラインナップで復活を遂げ、EP『Maha Kali』をリリースしました。この復活はファンやシーン全体に大きな衝撃を与えました。2006年、3rdアルバム『Reinkaos』を発表しました。この作品は、従来のブラックメタル的なサウンドから一歩踏み出し、よりオカルト的・儀式的な雰囲気を持つアルバムとして制作されました。ただし、このアルバムは以前の作品とは異なり、賛否が分かれる結果となりました。
同年、ジョン・ノトヴェイトはバンドの終焉を宣言し、「DISSECTIONは最終を迎えた」として活動を終了しました。その数か月後、彼は自ら命を絶ちました。この出来事により、DISSECTIONはその歴史に劇的な幕を下ろしました。
DISSECTIONは、メロディック・ブラック・メタルの枠を超えた音楽的および精神的影響を与え続けています。『The Somberlain』と『Storm of the Light’s Bane』は、メロディック・ブラック・メタルの金字塔として語り継がれ、多くのフォロワーバンドに影響を与えています。その音楽と思想は、単なるブラックメタルの枠を超え、極めて個性的で唯一無二の存在として評価されています。現在でも多くのファンがDISSECTIONの音楽に魅了されており、その伝説は色あせることなく語り継がれています。
バンドメンバー
【現メンバー】
ジョン・ノトヴェイト(Jon Nödtveidt) – Vocal/Guitar(1989~1997、2004~2006)
トーマス・アスクルンド(Tomas Asklund) – Drums(2004~2006)
セット・テイタン(Set Teitan) – Guitar(2004~2006)
【過去メンバー】
ピーター・パルムダール(Peter Palmdahl) – Bass(1989~1997)
オーレ・オーマン(Ole Ohman) – Drums(1990~1995)
ジョン・スヴェッツロット(Guitar) – Guitar(1991~1994)
ヨハン・ノルマン(Johan Norman) – Guitar(1994~1997)
トビアス・ケルグレン(Tobias Kellgren) – Drums(1995~1997)
ブリス・ルクレ(Brice Leclercq) – Bass(2004~2005)
ホーコン・ニコラス・フォーワルド(Haakon Nikolas Forwald) – Bass(2005)
DISSECTIONの代表作を振り返る:名盤に宿る永遠の美学
Reinkaos(2006)
- Nexion 218
- Beyond The Horizon
- Starless Aeon
- Black Dragon
- Dark Mother Divine
- Xeper-I-Set
- Chaosophia
- God Of Forbidden Light
- Reinkaos
- Internal Fire
- Maha Kali
儀式は完結した―“Reinkaos”が描いたDISSECTION最終形態の真実。
2006年に発表された最終作『Reinkaos』は、メロディック・ブラックメタルの枠を超えた“儀式的アルバム”として、今なお賛否を巻き起こし続けています。ジョン・ノトヴェイト(Jon Nödtveidt)<Vo,Gt>のオカルティズムへの傾倒を色濃く反映した本作は、従来の冷徹なギターリフや暗黒美学とは異なり、秩序ある構成と儀式的な言葉に満ちた哲学的作品へと昇華。混沌のなかに「再創造(Re-In-Kaos)」の意志を刻み込み、音楽という手段で思想を具現化しています。リスナーに試されるのは“音”ではなく“意味”。DISSECTIONという存在の終焉にして最終形態―それが『Reinkaos』なのです。今こそ、この異端の真価に触れてみてはいかがでしょうか。
Storm Of The Light’s Bane(1995)
- At The Fathomless Depths
- Night’s Blood
- Unhallowed
- Where Dead Angels Lie
- Retribution – Storm Of The Light’s Bane
- Thorns Of Crimson Death
- Soulreaper
- No Dreams Breed In Breathless Sleep
冷たき美と死の調和―“Storm Of The Light’s Bane”が描いた黒き叙事詩。
2ndアルバム『Storm Of The Light’s Bane』は、メロディック・ブラックメタルというジャンルにおいて今なお不朽の名盤と称される存在です。氷のように冷たい旋律と鋭利なリフが織り成す楽曲群は、美と死が共存する“闇の芸術”そのもの。中でも「Night’s Blood」や「Where Dead Angels Lie」は、激しさの中に宿る叙情美で多くのフォロワーを生み出しました。本作は単なる音楽作品にとどまらず、DISSECTIONの世界観と哲学がもっとも明確に表現された結晶体。今こそこの一枚に立ち返り、ブラックメタルにおける究極の美を再体験してみてはいかがでしょうか。
The Somberlain(1993)
- Black Horizons
- The Somberlain
- Crimson Towers
- A Land Forlorn
- Heaven’s Damnation
- Frozen
- Into Infinite Obscurity
- In The Cold Winds Of Nowhere
- The Grief Prophecy / Shadows Over A Lost Kingdom
- Mistress Of The Bleeding Sorrow
- Feathers Fell
すべてはここから始まった―“The Somberlain”が刻んだ暗黒音楽の夜明け。
デビュー作『The Somberlain』は、メロディック・ブラックメタルというジャンルを確立した記念碑的作品です。冷酷なブラックメタルの攻撃性に、叙情的かつドラマティックなギターメロディを融合させたそのサウンドは、当時のシーンに新風を巻き起こしました。表題曲「The Somberlain」や「Black Horizons」では、絶望と美が交錯する旋律がリスナーを深淵へと誘います。荒削りながらも明確な世界観と構築美が光る本作は、DISSECTIONというバンドの“精神性”の出発点であり、後続のブラックメタルにも多大な影響を与えました。すべてはこの1枚から始まった―それが『The Somberlain』の偉大さなのです。
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