CYNIC(シニック)の歴史と進化|フロリダ発テクニカル・デスメタルの真髄に迫る

CYNIC(シニック)
CYNIC(シニック)

CYNIC(シニック)とは?フロリダで誕生した革新的デスメタル・バンド

CYNIC(シニック)は1987年、アメリカ合衆国フロリダ州マイアミで結成されたスラッシュ・メタルを出発点にしながらも、後にプログレッシヴ・デス・メタルという全く新しい音楽領域を切り開いた伝説的バンドです。中心人物であるポール・マスヴィダル(Paul Masvidal)<Gt,Vo>とショーン・レイナート(Sean Reinert)<Dr>を軸に、驚異的なテクニックと哲学的な世界観を融合させたサウンドで、世界中のミュージシャンやファンに深い影響を与えました。

初期のCYNICは、SLAYERPOSSESSEDなどの影響を受けたスラッシュ寄りのサウンドを展開していましたが、1989年以降は、フロリダ・デスメタルの中心人物であるDEATHのチャック・シュルディナー(Chuck Schuldiner)との関わりが大きな転機となります。ポール・マスヴィダル(Paul Masvidal)とショーン・レイナート(Sean Reinert)はDEATHの名盤『Human』(1991)に参加し、その経験を通じてテクニカルかつプログレッシヴな音楽性を深化させていきました。これが後にCYNIC独自のスタイル形成へとつながっていきます。

1993年、待望のデビューアルバム『Focus』をリリース。この作品は、デスメタルにジャズやフュージョンの要素を融合させた革新的サウンドであり、当時としては異例のクリーンボイスやヴォコーダーを導入した実験性でも注目を集めました。リリース当初は賛否が分かれたものの、時を経て“プログレッシヴ・デスメタルの金字塔”として高く評価されています。

しかし、時代の流れとメンバーの音楽的志向の違いにより、アルバム1枚だけを発表して、1994年に解散。その後、メンバーは女性ヴォーカリストが加入してプログレッシヴ・メタル/ロック・バンド、PORTALを結成しますが、デモテープのみの発表に留まり、1996年に解散しました。

2006年、ファン待望の再結成が実現し、2008年には15年ぶりに2ndアルバム『Traced in Air』を発表。より叙情的でスピリチュアルな要素を強め、メロディと技巧が見事に調和したサウンドは、プログレッシヴ・メタル界でも高い評価を得ました。その後も『Kindly Bent to Free Us』(2014)をリリースし、音楽的探求を続けました。

しかし、2020年代に入り、バンドは再び悲劇に見舞われます。創設メンバーのショーン・レイナート(Sean Reinert)とショーン・マローン(Sean Malone)が相次いで逝去。それでもポール・マスヴィダル(Paul Masvidal)はCYNIC名義で活動を継続し、2021年にアルバム『Ascension Codes』を発表しました。この作品は、亡き仲間への追悼と宇宙的哲学をテーマにした深遠なサウンドで、バンドの精神が今なお生き続けていることを示しました。

CYNICは単なるテクニカル・メタルのバンドではなく、音楽を通して「精神性」と「生命の意味」を探求した芸術的存在です。彼らの作品は、フロリダ・デスメタルの系譜においても異彩を放ち、現代メタルシーンにおける革新と表現の自由を象徴しています。結成から現在に至るまで、CYNICが残した影響は計り知れず、今もなお多くのアーティストにインスピレーションを与え続けています。

 

CYNICのバンドメンバーの変遷と現在のラインナップ

【現メンバー】
■ポール・マスヴィダル(Paul Masvidal) – Vocal/Guitar/Vocoder Vocal/Guitar Synth(1987~1994、2006~)
■ブランドン・ジィフィン(Brandon Giffin) – Bass(2023~)
■マイク・ギルバート(Mike Gilbert) – Guitar(2024~)

【過去メンバー】
■マーク・ファン・エル(Mark Van Erp) – Bass(1987~1989)
■ショーン・レイナート(Sean Reinert) – Drums/Keyboard(1987~1994、2006~2015)
■ラッセル・モフスキー(Russell Mofsky) – Guitar(1987)
■ジャック・ケリー(Jack Kelly) – Vocal(1987~1988)
■エステバン・”スティーヴ”・リンカーン(Esteban “Steve” Rincon) – Vocal(1987)
■ジェイソン・ゴーベル(Jason Gobel) – Guitar/Keyboard(1988~1994)
■トニー・チョイ(Tony Choy) – Bass(1989~1993)
■ダーレン・マクファーランド(Darren Mcfarland) – Bass(1992)
■クリス・クリンゲル(Chris Kringel) – Bass(1993~1994)
■ショーン・マローン(Sean Malone) – Bass/Chapman Stick(1993~1994、2008、2011、2012~2015、2017~2020)
■トニー・ティーガーデン(Tony Teegarden) – Vocal/Keyboard(1993~1994)
■サンティアゴ・ドブレス(Santiago Dobles) – Guitar(2006~2007)
■ロビン・ジーンホルスト(Robin Zielhorst) – Bass(2008~2010)
■ティモン・クライドニアー(Tymon Kruidenier) – Guitar/Vocal(2008~2010)
■マット・リンチ(Matt Lynch) – Drums(2015~2025)

 

アルバム紹介:CYNIC(シニック)は今なお進化し続ける哲学的メタルの象徴

Ascension Codes(2021)

Cynic - Ascension Codes(2021)

  1. Mu-54*
  2. The Winged Ones
  3. A’-va432
  4. Elements And Their Inhabitants
  5. Ha-144
  6. Mythical Serpents
  7. Sha48*
  8. 6th Dimensional Archetype
  9. DNA Activation Template
  10. Shar-216
  11. Architects Of Consciousness
  12. DA’z-a86.4
  13. Aurora
  14. Du-*61.714285
  15. In A Multiverse Where Atoms Sing
  16. A’jha108
  17. Diamond Light Body
  18. Ec-ka72

 

Kindly Bent To Free Us(2014)

Cynic - Kindly Bent To Free Us(2014)

  1. True Hallucination Speak
  2. The Lion’s Roar
  3. Kindly Bent To Free Us
  4. Infinite Shapes
  5. Moon Heart Sun Head
  6. Gitanjali
  7. Holy Fallout
  8. Endlessly Bountiful

 

Traced In Air(2008)

Cynic - Traced In Air(2008)

  1. Nunc Fluens
  2. The Space For This
  3. Evolutionary Sleeper
  4. Integral Birth
  5. The Unknown Guest
  6. Adam’s Murmur
  7. King Of Those Who Know
  8. Nunc Stans

 

Focus(1993)

Cynic - Focus(1993)

  1. Veil Of Maya
  2. Celestial Voyage
  3. The Eagle Nature
  4. Sentiment
  5. I’m But A Wave To …
  6. Uroboric Forms
  7. Textures
  8. How Could I

 

 

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