1349とは? – バンドの基本情報とその名前の由来
1349は、ノルウェーのブラック・メタル・バンドで、1997年に結成されました。その名は、ヨーロッパでペストが猛威を振るい始めた年「1349年」から取られています。この歴史的な出来事は、バンドの音楽に暗く暴力的なテーマを与える象徴として機能しています。1349は、初期ブラックメタルの冷酷で荒々しい音楽スタイルを継承しながらも、独自の音楽性を発展させてきました。
1349は、元々ALVHEIMというバンドで活動していたメンバーを中心に結成されました。中心メンバーには、レイヴン(Ravn)<Vo>、アルカオン(Archaon)<Gt>、セイデマン(Seidemann)<Ba>、ノルウェーの伝説的ブラックメタルバンド、SATYRICONのフロスト(Frost)<Dr>が加わりました。この強力なラインナップにより、1349はブラックメタルシーンで瞬く間に注目を集めました。
1999年、バンドは2ndデモ「Chaos Preferred」をリリースし、その後2003年にはデビューアルバム「Liberation」を発表しました。このアルバムは、初期のノルウェーブラックメタルの荒々しい美学を反映しており、彼らの音楽が伝統に根ざしていることを示しました。
続くアルバム「Beyond the Apocalypse」(2004年)と「Hellfire」(2005年)で、1349はその音楽スタイルをより過激で攻撃的なものへと深化させました。特に「Hellfire」は、ブラックメタルの冷徹で破壊的なサウンドの代表作として高い評価を受けています。
その後、2009年にリリースされた4thアルバム「Revelations of the Black Flame」では、ブラックメタルにアンビエントや実験的な要素を取り入れるという大胆な試みを行いました。この作品は賛否両論を呼びましたが、1349が常に進化し続けるバンドであることを証明しました。
2010年の「Demonoir」では、従来の攻撃的なサウンドに回帰し、ファンからの支持を取り戻しました。その後も、「Massive Cauldron of Chaos」(2014年)や「The Infernal Pathway」(2019年)といったアルバムをリリースし、ブラックメタルシーンでの地位を確固たるものとしました。
1349は、その激しくエネルギッシュなライブパフォーマンスで知られています。フロストの超人的なドラミングと、レイヴンの凄まじいヴォーカルパフォーマンスは、観客を圧倒する力を持っています。また、バンドのヴィジュアルとステージ演出は、ブラックメタルの暗黒美学を完璧に体現しています。
2020年代に入っても、1349はツアーや新たな音楽制作を続けており、ブラックメタルの第一線で活躍しています。彼らの音楽は、伝統的なブラックメタルの要素を保持しつつ、現代的なアプローチを取り入れることで、ジャンルの限界を押し広げています。
1349は、ノルウェーブラックメタルの伝統を守りつつも、独自の音楽的探求を続ける数少ないバンドの一つです。その冷酷で妥協のないサウンドは、ブラックメタルファンにとって絶大な魅力を持ち続けています。
バンドメンバー
【現メンバー】
セイデマン(Tor Risdal “Seidemann” Stavenes) – Bass(1997~)
レイヴン(Olav “Raven” Bergene) – Vocal(1997~)、Drums(1997~2000)
アルカオン(Idar “Archaon” Burheim) – Guitar/Vocal[backing](1999~)
フロスト(Kjetil-Vidar “Frost” Haraldstad) – Drums(2001~)
【過去メンバー】
バルフォリ(Lars “Balfori” Larsen) – Guitar(1997~1998)
ツァルヴ(Andre “Tjalve” Kvebek) – Guitar(1997~2006)
1349のアルバムを時系列で紹介 – 進化の軌跡
The Wolf & The King (2024)
- The God Devourer
- Ash Of Ages
- Shadow Point
- Inferior Pathways
- Inner Portal
- The Vessel And The Storm
- Obscura
- Fatalist
「王は命じ、狼は咆哮する――1349が刻む二重支配の黙示録」
8thアルバム『The Wolf & The King』は、タイトルからも示されるように、“支配”と“野性”という相反する力のせめぎ合いをテーマに据えた作品です。咆哮するようなギターと暴虐なドラムが描き出すのは、原始的な本能と冷酷な統治が交錯する音世界。狼は破壊と自由を、王は秩序と圧制を象徴し、その対立と融合が全編を貫いています。これまでの1349作品に比べて楽曲の構成や展開はより緻密でありながら、暴力性や暗黒性は一切失われていません。獰猛でありながら威厳に満ちたサウンドは、ブラックメタルの新たな神話を築くにふさわしい完成度を誇ります。『The Wolf & The King』は、1349が到達した深淵の中で響く、力と本能の物語です。
The Infernal Pathway (2019)
- Abyssos Antithesis
- Through Eyes Of Stone
- Tunnel Of Set Ⅷ
- Enter Cold Void Dreaming
- Towers Upon Towers
- Tunnel Of Sex IX
- Deeper Still
- Striding The Chasm
- Dødskamp
- Tunnel Of Set X
- Stand Tall In Fire
「灼熱の美学と冷酷な整合、1349が切り拓く闇の航路」
2019年発表の7thアルバム。冷酷で暴虐なブラックメタルの真髄を体現した作品です。バンドの特徴である猛々しいブラストビート、邪悪なリフ、そしてアトモスフェリックな要素が融合し、聴く者を終わりなき混沌の世界へ引きずり込みます。このアルバムでは、特に「Through Eyes of Stone」や「Striding the Chasm」といった楽曲が、圧倒的なスピードと凶暴性を誇ります。一方で「Dødskamp」は不気味なミッドテンポの展開を見せ、1349の音楽性の幅広さを証明しています。全体的に荒涼としたサウンドスケープが支配し、悪魔的な世界観が一貫して表現されています。プロダクション面では、荒々しさを保ちつつも楽器の分離が良好で、各パートの迫力がしっかり伝わります。過去作と比較すると洗練された印象を受けますが、1349らしいプリミティブな狂気は失われていません。ブラックメタルの過激さと芸術性を両立させた強力な一枚です。
Massive Cauldron Of Chaos (2014)
- Cauldron
- Slaves
- Exorcism
- Postmortem
- Mengele’s
- Golem
- Chained
- Godslayer
「混沌を操る者たち――ブラックメタルの業火が再び沸騰する」
6thアルバム『Massive Cauldron of Chaos』は、凶悪さと緻密さを高次元で融合させた、バンドの新たなる到達点を迎えました。タイトルが示す通り、“混沌の大釜”のように煮えたぎるサウンドは、荒々しさを保ちながらも驚くほど統制が取れており、ブラックメタルにおける「制御されたカオス」の極致を体現しています。鋭利なギターリフと精密なブラストビートが織り成す楽曲は、リスナーに圧倒的な緊張感を与えつつ、”美的”暴力とも呼べる美しさをも内包。混沌に秩序を与えたかのような構築美は、1349がさらなる進化を遂げた証です。
Demonoir (2010)
- Tunnels Of Set I
- Atomic Chapel
- Tunnel Ⅱ
- When I Was Flesh
- Tunnel Ⅲ
- Psalm 7:77
- Tunnel Ⅳ
- Pandemonium War Bells
- Tunnel Ⅴ
- The Devil Of The Deserts
- Tunnel Ⅵ
- Demonoir
- Tunnel Ⅶ
「7つの門をくぐる闇の儀式――1349が導く終末の巡礼」
5thアルバム『Demonoir』は、実験的要素を含みながらもブラックメタルの本質に立ち返った作品であり、彼らの音楽的成熟を象徴する一枚です。アルバム全体に配置された“Tunnel of Set”という7つのインタールードが、聴き手を闇の回廊へと導く構成となっており、まるで悪魔的な儀式の中を進むかのような没入感を生み出します。過去作『Revelations of the Black Flame』で見せたアンビエントの影響を残しつつも、暴虐なリフと爆速ドラムが炸裂する本作は、原点回帰と深化の絶妙なバランスを実現しています。地獄を旅するような不穏さと緊張感に満ちた『Demonoir』は、1349が生み出した最も構築的かつ儀式的なブラックメタル作品といえるでしょう。
Revelations Of The Black Flame (2009)
- Invocation
- Serpentine Sibilance
- Horns
- Maggot Fetus…Teeth Like Thorns
- Misanthropy
- Uncreation
- Set The Controls For The Heart Of The Sun(Pink Floyd Cover)
- Solitude
- At The Gate…
「賛否を超えた挑戦作 – “1349”が壊した常識と再構築」
共同プロデューサーにCELTIC FROSTのトム・G・ウォリアー<Vo,Gt>が名を連ねた4thアルバム『Revelations of the Black Flame』は、従来の激烈なブラックメタル路線から逸脱した、極めて実験的な作品として知られます。ダーク・アンビエントやノイズ的要素を大胆に取り入れた本作は、聴く者に不穏と恐怖を与える異質な音響体験を提供します。しかしその前衛性ゆえ、長年のファンの間では評価が大きく分かれ、「裏切り」と「革新」が同時に語られるアルバムとなりました。1349の型破りな姿勢を象徴する本作は、彼らがただの“伝統主義者”ではないことを示す問題作となりましたが、ブラックメタルの可能性に挑んだ挑戦的な1枚です。
Hellfire (2005)
- I Am Abomination
- Nathicana
- Sculptor Of Flesh
- Celestial Deconstruction
- To Rottendom
- From The Deeps
- Slaves To Slaughter
- Hellfire
「灼熱の咆哮、凍てつく混沌 – “Hellfire”が焼き尽くす」
1349の3rdアルバムで、バンドの代表作『Hellfire』は、ブラックメタルの限界を塗り替えるかのような圧倒的暴虐性と完成度で、シーンに衝撃を与えた一枚です。爆走するブラストビートと凶悪なリフ、そしてレイヴン<Vo>の地獄のような咆哮が織り成す音像は、まさに「地獄の業火」を体現。特にラストを飾る12分超のタイトル曲「Hellfire」は、激しさの中にも壮大さを湛えた名曲で、バンドの音楽的成熟を示す重要なマイルストーンです。前作までの荒々しさを保ちつつも、サウンドはより精密かつ凶悪に進化。ノルウェー・ブラックメタルの血脈を受け継ぎながら、圧倒的スピードと破壊力で唯一無二の存在感を放ちます。『Hellfire』は1349の名を決定づけた金字塔的作品です。
Beyond The Apocalypse (2004)
- Chasing Dragons
- Beyond The Apocalypse
- Aiwass-Aeon
- Nakronatalenheten
- Perished In Pain
- Singer Of Strange Songs
- Blood Is The Mortar
- Internal Winter
- The Blade
「黙示録は序章に過ぎない、真の混沌が今ここに」
1349の2ndアルバム『Beyond The Apocalypse』は、デビュー作の暴虐性をさらに推し進めた、まさに“地獄のその先”を描く異端の第二章です。圧巻のブラストビートと凍てつくギターリフが容赦なく襲いかかり、終末の音像を一気に叩きつけます。全編に漂う破壊衝動と混沌は、単なるブラックメタルの枠を超え、聴く者を破滅の彼方へと連れ去るかのよう。レイヴン<Vo>の獰猛なヴォーカルとフロスト<Dr>の鬼神の如きドラミングは健在で、バンドとしての結束力と暴力性が一層際立ちます。『Beyond The Apocalypse』は、単なる続編ではなく、1349の“終わりなき地獄巡礼”の深化を示す重要な通過点であり、ブラックメタルの凄烈な進化を証明する1枚です。
Liberation (2003)
- Manifest
- I Breathe Spears
- Riders Of The Apocalypse
- Deathmarch
- Pitch Black
- Satanic Propaganda
- Legion
- Evil Oath
- Liberation
- Buried By Time And Dust(Mayhem Cover)
「荒削りで凶悪、それこそが純粋な黒――ノルウェーの真髄がここに」
ノルウェー発のブラックメタルバンド1349が放った衝撃のデビュー作『Liberation』は、凍てつく冷気と暴虐的な音塊がぶつかり合う、まさに暗黒の旅路の始まりを告げるアルバムです。MAYHEM直系のプリミティブなブラックメタル精神を継承しながらも、圧倒的なスピードと破壊力を誇るドラミング、そして荒れ狂うギターが混沌とした美を描き出します。特にSATYRICONのドラマー、フロストの存在感は圧巻で、本作の凄まじい推進力の中核を成しています。タイトル通り、“解放”されたような激烈なサウンドは、1349がただのフォロワーでないことを証明しています。以降の作品群にも続く黒炎の序章として、『Liberation』はブラックメタル史に刻まれるべき一枚です。
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