BIOHAZARDとは?─NYハードコア×ヘヴィメタルの融合バンド
BIOHAZARD(バイオハザード)は、アメリカ・ニューヨーク州ブルックリン出身のハードコア/ミクスチャー/グルーヴ・メタル・バンドです。1987年に結成され、ストリートの現実を描く社会派の歌詞と、ハードコア・パンクの攻撃性、ラップのフロウ、そしてメタルの重厚なサウンドを融合したスタイルで、世界中のファンに衝撃を与えてきました。
ニューヨーク・ハードコア(NYHC)シーン全盛期に活動を開始し、数本のデモ制作の後、1990年にセルフタイトルのデビュー・アルバム『Biohazard』をリリース。リアルな社会問題をテーマにした歌詞が注目を集め、アンダーグラウンドで着実に支持を広げていきました。
1992年、2ndアルバム『Urban Discipline』で一躍シーンの表舞台に立ちます。代表曲「Punishment」は、ハードコアとメタル、ヒップホップを融合させた革新的サウンドで、現在でもライブの定番曲として支持されています。この作品は、BIOHAZARDを語るうえで欠かせない名盤として、多くのメディアやファンに高く評価されています。
1994年には3rdアルバム『State of the World Address』を発表し、さらなる成功を収めます。この時期にはロードランナー・レコードと契約し、メインストリーム進出も果たしました。より洗練されたサウンドと強烈なメッセージ性は、多様なジャンルのリスナーからも支持を集め、BIOHAZARDはクロスオーバー・メタルの代表格としての地位を確立します。
1990年代後半から2000年代にかけて、バンドは幾度もメンバーチェンジを経験しますが、2006年に解散。2008年に再結成、2011年にオリジナルメンバーのエヴァン・サインフェルド(Evan Seinfeld)<Vo,Ba>が脱退しますが、サポートメンバーを迎え世界中のステージでパフォーマンスを披露しました。
2022年、BIOHAZARDはオリジナル・ラインナップでの再始動が注目を集めており、再び新たな世代へその影響力を広げています。ヒップホップとメタルを融合させたスタイルは、現代のラップメタル/ミクスチャーバンドにも多大な影響を与えています。
BIOHAZARDは、ジャンルの垣根を超えたサウンドと、鋭い社会的メッセージを武器に、世界中のファンを魅了し続けるバンドです。ハードコア、ラップ、メタルを融合させたその音楽は、今なお多くのアーティストに影響を与えており、彼らの存在は決して過去のものではありません。これからも再評価が進むことが予想される、真のクロスオーバー・レジェンドです。
バンドメンバー
【現メンバー】
ビリー・グラツィアデイ(Billy Graziadei) – Vocal/Guitar(1987~2006、2008)
エヴァン・サインフェルド(Evan Seinfeld) – Vocal/Bass(1987~2006、2008~2011、2022~)
ボビー・ハンベル(Bobby Hambel) – Guitar(1987~1995、2008~)
ダニー・シュラー(Danny Schuler) – Drums(1988~2006,2008~)
【過去メンバー】
ロブ・エチェベリア(Rob Echeverria) – Guitar(1996~2000)
アンソニー・ミオ(Anthony Meo) – Drums(1987~1988)
レオ・カーリー(Leo Curley) – Guitar(2000~2002)
カーマイン・ヴィンセント(Carmine Vincent) – Guitar(2002~2003)
スコット・ロバーツ(Scott Roberts) – Guitar(2003~2006)、Vocal/Bass(2011~2016)
アルバム紹介|ジャンルを超えた存在としての魅力
Reborn In Defiance(2012)
- 9:ⅢX6.941
- Vengeance Is Mine
- Decay
- Reborn
- Killing Me
- Countdown Doom
- Come Alive
- Vows Of Redemption
- Waste Away
- You Were Wrong
- Skullcrusher
- Never Give In
- Season The Sky
過去を超え、未来を切り拓く―BIOHAZARDの逆襲がここに始まる!
オリジナル・ラインナップによる奇跡の復活を告げる一枚でありながら、エヴァン・サインフェルド(Evan Seinfeld)<Vo,Ba>が参加した最後のアルバム。ブルックリンのストリートから発せられる怒りと社会へのメッセージは、今なお鋭さを失っていません。グルーヴ感あふれるリフ、ハードコアの猛攻、そしてラップ的フロウが混在する楽曲群は、彼らの原点を想起させつつも、より重厚で洗練された印象を残します。「Vengeance Is Mine」「Come Alive」などは、まさにバンドの進化と決意を象徴するキラートラック。BIOHAZARDがなぜ伝説であり続けるのか、その答えがここに刻まれています。ヘヴィネスとリアルが交差するこの作品は、彼らの“再誕”と“再戦”を告げる闘争の序章です。
Means To An End(2005)
- My Life, My Way
- The Fire Burns Inside
- Killing To Be Free
- Filled With Hate
- Devotion
- Break It Away From Me
- Kings Never Die
- Don’t Stand Alone
- To The Grave
- Set Me Free
終わりへの手段、それは叫びと拳で語るBIOHAZARD流のリアリズム!
BIOHAZARDの原点である怒りとストリートのリアルを再び前面に押し出した一作です。暴力、裏切り、不正義といった社会の闇をテーマに、重く鋭いリフとタフなグルーヴで畳みかけるスタイルは健在。とりわけ「My Life, My Way」や「Killing Me」は、内面の葛藤と外部への抵抗を強烈に描き出します。前作よりも粗削りなサウンドは、むしろバンドの泥臭さと誠実さを際立たせ、リスナーに直接拳を叩きつけるような衝撃を与えます。BIOHAZARDはこのアルバムで再び“手段”としての音楽を武器とし、終わりなき現実との戦いに挑んでいます。
Kill Or Be Killed(2003)
- Intro
- World On Fire
- Never Forgive, Never Forget
- Kill Or Be Killed
- Heads Kicked In
- Beaten Senseless
- Make My Stand
- Open Your Eyes
- Penalty
- Dead To Me
- Hallowed Ground
生き残るか、死ぬか―BIOHAZARDが叩きつける現代社会への警鐘!
攻撃性とグルーヴを極限まで高めたサバイバル・メタルの真骨頂が全面に押し出された7thアルバム。バンドの代名詞であるハードコアとラップメタルの融合はそのままに、よりダイレクトでパワフルな音像が全面に押し出されています。「World on Fire」から放たれる爆発力は、リスナーの闘争本能を瞬時に刺激します。タフなリフ、アグレッシブなボーカル、切り裂くようなビート――どれをとってもBIOHAZARD節が炸裂。混迷する時代に対し、生き残るか、屈するかというテーマが全編に貫かれており、まさにタイトル通りのサウンド哲学を体現した作品です。BIOHAZARDの戦闘的側面を味わいたいなら、この一枚は外せません。
Uncivilization(2001)
- Sellout
- Uncivilization
- Wide Awake
- Get Away
- Unified
- Gone
- Letter Go
- Last Man Standing
- HFFK
- Domination
- Trap
- Pastic
- Cross The Line
文明の仮面を引き裂く怒り―BIOHAZARDが放つ無秩序のリアリズム!
BIOHAZARDが再び混沌の時代に牙を剥いた意欲作です。タイトルが示す通り、秩序や理性を超えた“野性”をテーマに、怒りとグルーヴがぶつかり合う強烈な一枚となっています。PANTERAのフィル・アンセルモやSEPULTURAのアンドレアス・キッサーなど、豪華ゲスト陣の参加も話題を呼び、多層的な音の厚みを実現。攻撃的なリフと重低音、そしてBIOHAZARD特有のストリート感あふれるメッセージが全編を貫いています。混沌と対峙するサウンドの中に、彼らはあえて“無文明”という原点を提示。このアルバムは、ただのヘヴィネスでは終わらない、文明批判と自己証明が融合した傑作です。
New World Disorder(1999)
- Resist
- Switchback
- Salvation
- End Of My Rope
- All For None
- Breakdown
- Inner Fear On
- Abandon In Place
- Skin
- Camouflage
- Decline
- Cycle Of Abuse
- Dogs Of War
- New World Disorder
BIOHAZARDの挑戦と変革、“New World Disorder”が示す音の進化!
BIOHAZARDが時代の不安と怒りを凝縮して叩きつけた問題作です。ヒップホップのリズムとヘヴィなグルーヴが融合したサウンドは、ラップメタルの真骨頂として高く評価されつつも、当時のファンを驚かせました。「Resist」「Domination」などの楽曲では、混沌と暴力が渦巻く社会への警告が鋭く響き渡ります。新メンバーの加入により音の厚みが増し、実験的なアプローチも随所に光ります。BIOHAZARDはこの作品で、“混乱”こそが現代のリアルであると提示。20世紀の終わりにして、21世紀の幕開けを告げるかのようなメッセージ性を持つ1枚です。変化を恐れずに進んだ彼らの姿勢こそ、真のハードコア・スピリットといえるでしょう。
Mata Leão(1996)
- Authority
- These Eyes(Have Seen)
- Stigmatized
- Control
- Cleansing
- Competition
- Modern Democracy
- Better Days
- Gravity
- A Lot To Learn
- Waiting To Die
- A Way
- True Strengths
- Thorn
- In Vain
静かなる凶暴、“Mata Leão”で聴くBIOHAZARDのもう一つの顔!
バンド史上もっとも内省的かつ緊迫感に満ちたアルバムです。ポルトガル語で“ライオン殺し”を意味するこの作品は、従来のハードコアな攻撃性に加え、ダークで鋭い感情の層を重ねた異色作となっています。ギタリストのボビーが脱退し、トリオ編成で制作された本作では、リフの重厚さとボーカルの切実さが際立ち、ストリートからの怒りだけでなく、内面の闇にも切り込む内容となっています。「Modern Democracy」や「A Lot to Learn」など、社会批判と自己表現が混ざり合う楽曲が並び、BIOHAZARDの音楽的深化を象徴。混乱の時代に、鋭利なサウンドで静かに抵抗する彼らの“もう一つの顔”がここに刻まれています。
State Of The World Address(1994)
- State Of The World Address
- Down For Life
- What Makes Us Tick
- Tales From The Hard Side
- How It Is
- Remember
- Five Blocks To The Subway
- Each Day
- Failed Territory
- Lack There Of
- Pride
- Human Animal
- Cornered
- Love Denied
怒りと理性が共鳴する―BIOHAZARDが放った“世界への声明”!
バンドがハードコアの枠を超えて音楽的に飛躍した名盤です。前作『Urban Discipline』で築いた基盤をさらに強固にし、より洗練されたサウンドと明確なメッセージを携えて社会と向き合います。ヘヴィでタイトなリフ、「What Makes Us Tick」「How It Is」などの代表曲では、グルーヴと怒りが共存するBIOHAZARD流のリアリズムが炸裂。ゲスト参加や音作りの進化もあり、バンドのスケール感が一気に拡大しました。ストリートの声に説得力を持たせた本作は、BIOHAZARDが真の“声明”として放った覚悟を証明した作品です。
Urban Discipline(1992)
- Chamber Spins Three
- Punishment
- Shades Of Grey
- Business
- Black And White And Red All Over
- Man With A Promise
- Disease
- Urban Discipline
- Loss
- Wrong Side Of The Tracks
- Mistaken Identity
- We’re Only Gonna Die
- Tears Of Blood
- Hold My Own
拳と叫びで築かれた名盤、“Urban Discipline”が放つNYハードコアの真髄!
BIOHAZARDを一躍シーンの最前線へと押し上げた決定的な名盤です。ハードコア、メタル、ラップを融合させたサウンドは、ストリートの現実と怒りをダイレクトに表現。「Punishment」は今なお語り継がれる代表曲であり、その爆発力と説得力は時代を超えて響きます。スラム街の暴力、腐敗した社会、個人の葛藤―BIOHAZARDが描く世界は、生々しく、逃げ場のない現実そのもの。だがその中にこそ、闘う意志と誇りが宿っています。鋭く切り込むリフと叫びが交差する本作は、まさに“闘争”を生き抜くためのサウンドトラック。『Urban Discipline』は、ただの音楽ではなく、人生の指針を提示する一冊の教科書です。
Biohazard(1990)
- Retribution
- Victory
- Blue Blood
- Howard Beach
- Wrong Side Of The Tracks
- Justified Violence
- Skinny Song
- Hold My Own
- Panic Attack
- Pain
- Survival Of The Fittest
- There & Back
- Scarred For Life
すべてはここから始まった―BIOHAZARDの原点にして攻撃的最前線!
デビュー作『Biohazard』は、ニューヨーク・ハードコアの胎動を荒削りなサウンドで記録した原点です。混沌と暴力が支配するストリートの現実を、重低音のリフと怒りのこもったリリックで直撃。粗さゆえのリアリズムが逆に魅力となり、後の名作群に通じる“BIOHAZARD節”がすでに確立されています。「Wrong Side of the Tracks」「Hold My Own」などは、社会への不信と自分自身への誇りが交差する名曲。まだ無名だった彼らが、己のルーツと真っ向から向き合い、ハードコア/メタル/ラップを融合させたスタイルの礎を築いたこの作品は、BIOHAZARDのすべての始まりであり、今なお燻り続ける火種です。
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