XASTHUR（ザスター）とは？孤高のUSブラックメタルが描く絶望と美学

XASTHUR（ザスター）とは？アメリカ発ディプレッシヴ・ブラックメタルの孤高の存在
1. XASTHURのプロジェクト（バンド）メンバーの変遷と現在のラインナップ
アルバム紹介：XASTHURが提示した“絶望の美学”とは・・・

XASTHUR（ザスター）とは？アメリカ発ディプレッシヴ・ブラックメタルの孤高の存在

XASTHUR（ザスター）は、1995年にアメリカ合衆国カリフォルニア州アルハンブラで結成された、孤高のアーティスト、マレフィックことスコット・コナー（Malefic = 本名：Scott Conner）によって始動したディプレッシヴ・ブラック・メタル・プロジェクト（バンド）です。ブラックメタルの枠を超え、「絶望」「孤独」「精神的崩壊」といったテーマを極限まで掘り下げたサウンドで、世界中のアンダーグラウンド・シーンに強烈な影響を与えました。

初期のXASTHURは、BURZUMやDARKTHRONEといったブラックメタルからの影響を受けながらも、より内省的でアンビエントな音作りを特徴としていました。デモ音源を複数発表した後、2001年のデモ『A Gate Through Bloodstained Mirrors』で一躍注目を集めます。この作品では、ローファイな録音と霧のようなギターサウンド、そして圧迫感のあるミックスが融合し、「精神世界の地獄」を描いた独自の表現として高い評価を受けました。

2002年にデビュ―アルバム『Nocturnal Poisoning』を発売。2004年には代表作『Telepathic with the Deceased』をリリース。このアルバムは、XASTHURの名をディプレッシヴ・スーサイダル・ブラックメタル（D.S.B.M）の象徴として確立させた作品です。続く『To Violate the Oblivious』（2004）や『Subliminal Genocide』（2006）では、音の厚みと叙情性がさらに増し、絶望を芸術へと昇華させた作風が高く評価されました。

しかし、2007年の『Defective Epitaph』以降、マレフィックは音楽活動に行き詰まりを感じはじめ、2010年にXASTHUR名義の活動を一度終了させます。その後、“Nocturnal Poisoning”としてアコースティックやダークフォーク要素を取り入れた新プロジェクトを始動。（Nocturnal Poisoning名義としてリリースされた作品は後にXASTHUR名義で発表されました）。しかし、2015年には再びXASTHUR名義へと戻り、ブラックメタルから離れた「ダーク・アメリカーナ」的アプローチへと進化しました。

XASTHURの作品群は、単なる音楽ではなく「内面の闇を可視化する芸術」として評価されています。マレフィック自身が抱える孤独や精神的苦悩をそのまま音に変換したかのようなサウンドは、聴く者に強烈な没入感と不安を与えます。現在もXASTHURは商業性から距離を置きながら、自主制作で活動を続け、アメリカ発ディプレッシヴ・ブラックメタルの象徴的存在として根強い支持を得ています。その音楽は、破壊的でありながらもどこか美しく、聴く者の感情を深く揺さぶります。まさに、「絶望を音に変えた孤高の芸術家」と呼ぶにふさわしい存在です。

XASTHURのプロジェクト（バンド）メンバーの変遷と現在のラインナップ

【現メンバー】
■マレフィック = スコット・コナー（Malefic = Scott Conner） – Guitar/Bass/Keyboard（1995～2010、2015～）、Vocal（1995～2010）、Drums（1999～2010）

【過去メンバー】
■リーチュアル（Ritual） – Drums（1991～2021）
■クリストファー・ヘルナンデス（Christopher Hernandez） – Drums（1991～2021）
■ロバート・ヌーセレイン（Robert Nusslein） – Guitar（1993～1999）
■レイチェル・ルーミアン（Rachel Roomian） – Bass（1999～2008）
■ジョー・ラリヴァ（Joe Larriva） – Bass（2008～2013）