BRUJERIAとは?その概要とバンドの特徴
BRUJERIA(ブルヘリア)は、アメリカを拠点に活動するデス/グルーヴ/メタルおよびグラインド・コアバンドです。バンド名の「Brujeria」はスペイン語で「魔術」や「呪術」を意味し、音楽や歌詞のテーマは、メキシコの麻薬カルテル、暴力、宗教、黒魔術、政治などを扱っています。結成当初から、メンバーの素性を隠すスタイルと過激なイメージで注目を集めました。
BRUJERIAは1990年、FEAR FACTORYやNAPALM DEATHのメンバーを含むミュージシャンたちによって結成されました。バンドは結成当初から匿名性を重視し、メンバーが麻薬カルテルの構成員であるかのような設定を取り入れ、ミステリアスなイメージを作り上げました。
1993年、デビューアルバム「Matando Güeros」をリリース。アルバムはその過激なアートワークと暴力的な歌詞で注目を浴び、社会的議論を巻き起こしました。この作品ではグラインドコアやデスメタルの要素を取り入れつつ、スペイン語の歌詞で独自性を出しました。
1995年に2ndアルバム「Raza Odiada」をリリース。このアルバムでは、麻薬取引や政治的腐敗、反アメリカ的なメッセージを含む歌詞が展開され、タイトル曲「Raza Odiada (Pito Wilson)」ではカリフォルニア州知事のピート・ウィルソンに対する批判が取り上げられました。この時期、BRUJERIAの音楽性はさらに磨かれ、グルーヴメタルの要素が強化されました。
2000年には3rdアルバム「Brujerizmo」をリリース。これまでのスタイルに加え、より洗練されたプロダクションとグルーヴ感のある楽曲構成が特徴で、広いリスナー層から評価を受けました。この作品はバンドのキャリアを象徴するアルバムの一つとして知られています。
2002年に入ると、BRUJERIAの活動は一時停滞しますが、その間もライブ活動やシングルのリリースで存在感を維持しました。バンドは元々メンバーが多忙な他プロジェクトを抱えているため、活動が断続的になることが特徴でもあります。
2016年、約16年ぶりとなる4thアルバム「Pocho Aztlán」をリリース。アルバムは、麻薬戦争、移民問題、社会的不平等といった現代的なテーマを扱い、バンドのスタイルを維持しながらも新しい要素を取り入れた作品です。この作品では、メキシコ系アメリカ人のアイデンティティや文化の衝突についても掘り下げています。
ライブ活動も活発化し、世界中のフェスティバルやツアーでファンを魅了しています。バンドは現在もスペイン語を主体とした歌詞と挑発的なテーマを貫いており、メタルシーンで独自のポジションを確立しています。
BRUJERIAの音楽は、デスメタルとグラインドコアを基盤に、グルーヴメタルやハードコアの要素を融合したものです。歌詞は社会批判や政治風刺、暴力的な物語を含み、しばしばブラックユーモアを伴います。
バンドの匿名性や挑発的なイメージも大きな特徴で、メンバーはライブやプロモーションで覆面やバラクラバを着用します。このスタイルは、音楽そのものだけでなく視覚的なインパクトでもリスナーに強い印象を与えています。
BRUJERIAは、その過激さと独創性でメタル界に大きな足跡を残しており、現在もジャンルの境界を押し広げる存在として活動を続けています。
バンドメンバー
【現メンバー】
ファンタスマ(Fantasma) – Bass/Vocal[additional](1989~)、Drums(1989~1992)
ホンゴ[シェーン・エンバリー](Hongo[Shane Embury]) – Guitar/Bass(1992~)
エル・サングロン[ヘンリー・サンチェス](El Sangron[Henry Sanchez]) – Vocal(2015~)
エル・クリミナル[アントン・レイセネッガー](El Criminal[Anton Reisenegger]) – Guitar(2016~)
エル・サティヴォ(El Sativo) – Drums(2022~)
ラ・エンカブロナダ[ジェシカ・ピメンテル](La Encabronada[Jessica Pimentel]) – Vocal[female](2022~)
【過去メンバー】
グエロ・シン・フェ [ビリー・ゴウルド](Guero SIn Fe [Billy Gould] ) – Bass/Guitar(1989~2002)
アセシノ [ディーノ・カザレス](Asesino[Dino Cazares] ) – Guitar(1989~2005)
ホジコン・Jr. [ジェロ・ビアフラ](Hozicon Jr. [Jello Biafra] ) – Vocal(1989~1992)
ピンチェ・ピーチ(Pinche Peach) – Vocal[additional]/Samples(1989~2024)
ホアン・ブルノ(Juan Brujo) – Vocal(1989~2024)
グレヌド [レイモンド・ヘレーナ](Grenudo [Raymond Herrera] ) – Drums(1992~2002)
マリジュアーノ・マチェーテ [アントニオ・”トイ”・ヘルナンデス](Marijuano Machete [Antonio “Toy” Hernandez] ) – Electronics/Samples/Vocal(2000~2001)
クリスト・デ・ピスト [ジェシー・ピンタード](Cristo De Pistro [Jesse Pintado] ) – Guitar(2000)
マルディト・X [トニー・カンポス](Maldito X [Tony Campos] ) – Vocal(2001)
ホンゴ・Jr. [ニコラス・バーカー](Hongo Jr. [Nicholas Barker] ) – Drums(2003~2005、2016~2022)
エル・シニコ [ジェフ・ウォーカー](El Cynico [Jeff Walker] ) – Bass, Vocal[backing](2006~2016)
エル・アンジェリート [トニー・ラウレアノ](El Angelito [Tony Laureano] ) – Drums(2006)
エル・ポドリド [エイドリアン・アーランドソン](El Podrido [Adrian Erlandsson] ) – Drums(2006~2014)
エル・クラヴェイダー [ダニエル・アーランドソン](El Clavader [Daniel Erlandsson] ) – Drums(2012~2014)
アルバム紹介 | BRUJERIAの音楽性と歌詞の世界観
Esto es Brujeria(2023)
- Esto Es Brujeria
- El Patron Del Reventon
- Estado Profund
- Bruja Encabronada
- G-A-K
- Tu Vida Loca
- Mexorcista
- Bestia De La Muerte
- Politicamente Correctos
- Mochado
- Perido En El Espacio
- Odio Que Amo
- Testamento 3.0
- COVID-666
- Lord Nazi Ruso
- Cocaina(J.J. CALE cover)
これはまさに呪術だ!BRUJERIAが貫く怒りのグラインドコア2023年版!
2023年発売の5thアルバムは、単なる音楽作品ではなく、暴力と政治が交錯する“呪詛”そのものだ。スペイン語によるアジテーション、鋭く切り裂くリフ、容赦ないブラストビートが、ラテンアメリカの混沌と不条理をむき出しに描き出す。今作は、過激なイメージだけでなく、現代社会への鋭い風刺と怒りが込められた一作であり、結成30年を越えた今なお、その表現は鈍るどころかさらに研ぎ澄まされている。「Mochado」「El Bajón」など、暴力と反抗心を叩きつけるキラートラックも健在。これは“呪術”ではなく、“現実”だ―BRUJERIAの最新型は、聴く者すべてに問う。今、世界は誰の手にあるのかと。
Pocho Aztlan(2016)
- Pocho Aztlan
- No Aceptan Imitaciones
- Profecia Del Anticristo
- Angel De La Frontera
- Plato O Polomo
- Satongo
- Isla De La Fantasia
- Bruja
- Mexico Campeon
- Culpan La Mujer
- Codigos
- Debliador
- California Uber Aztlan(DEAD KENNEDYS cover)
16年の沈黙を破る呪術再臨―“Pocho Aztlan”が告げたBRUJERIAの復活劇!
メキシコ系覆面グラインドコア集団・BRUJERIAが、前作から実に16年ぶりとなるアルバムでシーンに帰還した。本作は、かつての過激な音と暴力的なリリックに加え、メキシコ先住神話“アズトラン”をモチーフにしたスピリチュアルな要素を内包。攻撃性はそのままに、より深く社会と文化に切り込む姿勢が強調されている。「Satongo」や「No Aceptan Imitaciones」ではグラインドの爆発力を、「Pocho Aztlan」では神秘的な空気を演出。メンバー交代を経てなお、BRUJERIAは鋭利なまま進化を続ける。これは復活以上、呪術の更新だ―その音は今も、怒りと信念に満ちている。
Brujerizmo(2000)
- Brujerizmo
- Vayan Sin Miedo
- La Traicion
- Pititis, Te Invoco
- Laboratorio Cristalitos
- Division Del Norte
- Marcha De Odio
- Anti-Castro
- Cuiden A Los Ninos
- El Bajon
- Mecosario
- El Desmadre
- SIDA De La Mente
暴力から理性へ―“Brujerizmo”が示したBRUJERIAの進化形!
これは、BRUJERIAにとって単なる3rdアルバムではない。初期のノイジーなグラインド一辺倒から脱却し、より明瞭で重厚なリフとグルーヴを強調したデスグラインドへと進化を遂げた意欲作である。スラッシュの要素を取り入れた「Brujerizmo」、社会風刺の効いた「Division del Norte」など、楽曲構成にも明確な変化が見られる。暴力的な表現は残しつつも、メッセージ性と音の完成度が格段に向上。覆面バンドとしての異端性を保ちながら、より鋭利な“理性の刃”として世界に切り込んだ一枚と言える。BRUJERIAの真の姿を知るなら、この作品は見逃せない。
Raza Odiada(1995)
- Raza Odiada(Pito Wilson)
- Colas De Rata
- Hechando Chingasos(Grenudos Locos Ⅱ)
- La Migra(Cruza La Frontera Ⅱ)
- Revolucion
- Consejos Narcos
- Almas De Venta
- La Ley De Plomo
- Los Tengo Colgando(Chingo De Mecos Ⅱ)
- Sesos Humanos(Sacrificio Ⅳ)
- Primer Meco
- El Patron
- Hermanos Menendez
- Pedre Nuestro
- Ritmos Satanicos
BRUJERIA最大の問題作、“Raza Odiada”が描く差別と怒りの構図!
BRUJERIAの音楽性とメッセージ性が最も鋭く結晶した問題作。スペイン語による過激なリリックは、メキシコ移民差別や麻薬戦争、政治的抑圧への怒りをストレートに表現。タイトル曲「Raza Odiada(憎まれた人種)」には、元カリスマ知事候補の演説音声をサンプリングするなど、現実と音楽が強烈に融合している。前作よりも洗練された音質とヘヴィな演奏が、メッセージの強度を倍増させ、グラインドコアの枠を超えた社会派アルバムとしての地位を確立。暴力の仮面の下に宿る真実―それこそが本作の最大の衝撃である。
Matando gueros(1993)
- Pura De Venta
- Leyes Narcos
- Sacrificio
- Santa Lucia
- Matando Gueros
- Seis Seis Seis
- Cruza La Frontera
- Grenudos Locos
- Chingo De Mecos
- Narcos-Satanicos
- Desperado
- Culeros
- Misas Negras(Sacrificio Ⅲ)
- Chinga Tu Madre
- Vergas Del Brujo / Estan Chingados
- Molestando Ninos Muertos
- Machetazos(Sacrificio Ⅱ)
- Castigo Del Brujo
- Cristo Del Roca
衝撃の生首ジャケットと共に―“Matando Güeros”が放った革命の叫び!
1993年の発売当時から物議を醸した最凶の問題作。生首を掲げた衝撃のジャケットと、麻薬・暴力・反権力をテーマにしたスペイン語の歌詞は、グラインドコアという枠すら超える社会的インパクトを持っている。荒々しい演奏とノイズ混じりのプロダクションが、生々しいリアリズムをさらに増幅。表題曲「Matando Güeros」は“白人殺し”という挑発的タイトルで、アメリカとメキシコの緊張を象徴する一曲として今も語り継がれる。暴力の美学と現実批判が融合した本作は、まさに“音楽の地獄門”をこじ開けた伝説の始まりだ。
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